「その後、加害は止まったという認識だ」
熊本市こども局こども福祉部を訪ねたのは2023年6月7日午後だった。
取材の冒頭、X氏による性虐待について聞きたいと説明すると、部長は「個別の案件について回答することはできない」と予防線を張った。だが、のちに《連載1》に記すことになる性虐待の証言をひとつずつ読み上げたところ、「施設職員の行動規範のレベルではないですよね、一般的にみて」と憮然とした。
伝えた内容については「把握している事実と、把握していなかった事実がある」とも答えた。
熊本市としてどの程度を把握しているのか、また行政指導を行ったかについて、部長は「すみません、細かなことは申し上げられません。いろんな情報はきていて、それに対して我々は調査は行っている」と前置きしながらも、問いを重ねていくごとに「勧告、行政指導は、口頭や文書や、これはオープンにはしていませんけど、対応はしてきています」「ご本人にも、施設長(理事長が兼任)にも、(指導したことは)ある。文書で出した経緯もある」と少しずつ答えた。
そうであれば指導内容の詳細を知るために情報公開請求をすれば開示するのかと聞くと、「そうですね。ただ、黒くなる(黒く塗りつぶすという意味)と思いますけど」とも答えた。つまり、当該施設に複数回、立ち入り調査を行い、口頭注意や文書での指導、勧告を行ったことを認めている。
性虐待をしたX氏が現在も女子施設に勤務し続けていることについて被害当事者や目撃者が反発していたことを伝えると、部長は「通告を受けて調査したのは2年前までのことで、その後、加害は止まったという認識だ。施設内の人員配置にまで我々は口を挟むことはできない」という。
部長の顔色が変わったのは、施設の子どもたちがプライベートパーツを触られた被害を伝えたときだった。プライベートパーツとは、胸、口、おしり、性器をさす。プライベートパーツを本人の同意なく触る行為が保護者や児童養護施設職員によって行われた場合、監護者わいせつ罪に相当する。刑法179条による監護者わいせつ罪の法定刑は6カ月以上10年以下の懲役。 起訴され有罪になると執行猶予がつかない限り、刑務所に収監される。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 電子版オリジナル