「私を触ったのは『せんせい』でした」被害女性が理事長の息子を告発 熊本市児童施設の性虐待

【熊本市で繰り返された性虐待の実態4】

三宅 玲子 ノンフィクションライター

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ニュース 社会

性虐待で“証拠”は絶対的に必要ではない

「それっておかしくないですか」

 告発した被害当事者と元職員がもっとも反発していたのは、児童養護施設の理事長の息子であるX氏が女子施設に配置され続けていることだ。被害者が増えてほしくないと、被害当事者たちは訴えた。

 この点について、熊本市こども福祉部部長は「X氏による性虐待には、証拠がない」と述べ、また、「行政には施設内の人事にまで踏み込む権限がない」とした。

 だが、子どもへの性虐待を証明するのに、日時の特定や物証が絶対的に必要というわけではないと話す専門家がいる。

 NPO法人チャイルドファーストジャパン理事長で医師の山田不二子氏だ。

山田不二子氏 筆者撮影

「そもそも家庭内における子どもへの性虐待については日常生活の中でのことなので、厳密に日時を特定してみても無意味ですし、子どもの身体の外傷や加害者のDNAなどの物証もほとんど存在しません。施設内の性虐待についても同様の考え方をすることができます」

 山田氏は日本における「司法面接」の第一人者だ。司法面接とは、性虐待や身体的虐待、ネグレクトなどの被害を受けた児童やDVを目撃した児童に対し、児相と警察、検察、医療者が連携して行う聞き取りのことだ。特に、性虐待を受けた児童は複数の関係機関に被害を繰り返し説明することで深刻な精神的負担を強いられるため、それを避ける目的で、主に英米で開発された手法だ。

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