「想定外」は常に起きる。温暖化前提の政策に振り回されるな
地球温暖化が政治・経済でも重要な課題となり、各国で脱炭素やカーボンニュートラル(炭素中立)の動きが加速している。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今世紀末までに世界の平均気温は約4度上昇すると予測、国際決済銀行(BIS)は2020年1月のリポートで温暖化のもたらす気候変動が金融危機を引き起こす可能性に警鐘を鳴らし、世界中に危機感が走った。
一方、地球温暖化そのものについては様々な情報が錯綜し、本質が見えにくくなっている。本稿では、筆者が専門とする地球科学の観点から温暖化の基本事項を確認しながら、私たちが今後どのような視座から判断すべきかを考えてみる。
地球温暖化とは、地球の平均気温が過去400年間でもっとも上昇している現象を指す。詳細な観測データが得られている20世紀以後に限ると、地球の平均気温は1度ほど上昇している。
その主な原因は、人間が石油や石炭などの化石燃料を大量に燃やしたことで発生した、大気中の二酸化炭素濃度の増加であるに違いないと、多くの科学者は推測している。事実、過去100年間で大気に含まれる二酸化炭素の濃度は280ppmから380ppmまで上昇した(ppmは100万分の1、体積比)。温暖化問題を扱う国際機関であるIPCCも、二酸化炭素が原因であると結論づけてきた。
では、二酸化炭素が増えると、なぜ気温が上昇するのだろうか。図を用いてくわしく説明しよう。そもそも地球の気温は太陽から来るエネルギーによって決まる。太陽から放射されるエネルギーの約3割は、大気圏に入ってから雲や地上で反射され宇宙へ消えていく(図1)。身近な例で言うと、ジェット機の窓から下に見える雲が白く輝いているのは、こうした太陽放射エネルギーを反射しているからである。
また太陽放射エネルギーの約2割は大気圏を通過する際に雲や大気に吸収される。この結果、太陽放射エネルギーは全体の5割ほどしか地上には到達しない。この残りのほぼ同量のエネルギーは、地球から放射され宇宙に出ていくのだ。すなわち、入るエネルギーと出るエネルギーが釣り合っていることで、地球の温度はほぼ一定に保たれているわけである。
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