トランプ前大統領は気配りもできる

「もしトラ」に備えよ。元駐米大使が日本の取るべき戦略を語る

杉山 晋輔 元駐米大使・早稲田大学特命教授
ニュース 政治 国際

日本は「トランプ2.0」に備えよ

 2018年3月28日、私はホワイトハウスにあるドナルド・トランプ大統領の執務室を訪ねました。駐米大使着任にあたり、信任状を手渡す捧呈式に臨んだのです。

 あくまで儀式ですから、通常は信任状を手渡したらすぐに退席します。ところが、この時はしばらくの間、トランプ氏と一対一で話す時間がもらえました。大統領就任から1年2カ月が経ち、安倍晋三総理とはすでに蜜月関係を築いていたこともあったのでしょう。ニコニコと上機嫌で、信任状に捺された陛下の御名御璽を見て、「これは何だ?」と尋ねてくる。私が丁寧に説明していると、傍らのスタッフは「大統領は忙しいんだから早く帰ってくれ」とでも言いたげな表情を浮かべていましたが、トランプ氏が気にする様子はありません。

「シンゾーは元気か?」

 と、私の肩をポンポンと叩きながら談笑を続けてくれました。

信任状捧呈式にて(在米日本大使館のXより)

 私のワシントン着任後、わずか3日目の出来事でした。在米大使館は160カ国ほどあり、捧呈式まで数カ月間待たされる大使もいますから、異例の処遇で、率直に驚きました。やはり日本、あるいは安倍総理に対する敬意だったように思います。

 3年間の大使在任中、外交交渉の場でトランプ氏の素顔を目の当たりにしてきました。メディアや政敵に対しては、厳しい顔を覗かせることもありましたが、少人数で話をする時は極めて紳士的で、親切に接してくれた姿が印象に残っています。

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source : 文藝春秋 2024年5月号

genre : ニュース 政治 国際