惹きつけられる美醜の対立
言葉を発するようになった友人の息子をあやしていると、その排泄物や性器への異様なまでの執着に度肝を抜かれる。クレヨンなど持たせると、人の皮膚から不気味な液体が流れ、家屋や植物はあやしい光線を放ち、大人が引きがちな線の内側と外側は奇妙に混ざり合う。去勢された大人であるこちらは排泄物なんてすぐ水に流し、性器への興味はなるべく隠し、退屈な線を引いて生きてはいるものの、不気味なもの、怖いもの、残酷で奇妙で穢れたものにどこか惹かれる習性はなくならない。
暗黒綺想家を名乗り、『ゴシック・カルチャー入門』、『黒人音楽史 奇想の宇宙』とその分厚い知識と批評眼で立て続けに大著を発表している著者の最新作は、漫画に焦点をあてる。暗黒小説から音楽やファッションまで「ゴシック」を切り口に評してきた著者が、その暗黒美学のレンズを通して漫画作品を読み解く。扱われる作家/作品は楳図かずおから山岸凉子、『進撃の巨人』や『チェンソーマン』まで、馴染み深い人気作が多いが、「ゴシック」への偏愛のもとでジャンルの壁を超えたカルチャーに逐一接続されながら読む分析は目新しさに溢れている。
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source : 文藝春秋 2024年6月号