「多様性」を下支えするもの
歌舞伎町の北側に住んでいた頃、歓楽街の中心部でもその周縁でも、日本語以外の言葉で話す人を見る機会は多かった。観光客ではないとわかるのは、邪魔な場所で立ち止まったり不自然な行動をしたりして街の円滑な流れを止めることなく、東京の日常に溶け込んでいるから。溶け込んで見えるようになるために彼らがどんな努力をして、どんな困難を乗り越え、自らの身体と日本の「普通」とのすり合わせをしてきたかを想像することはほとんどなかった。
西の歓楽街である大阪・ミナミのとある「教室」を舞台とした本書は、新聞記者兼ボランティアとして長期的にそこに関わった著者が出会った人々の記録だ。住民の3割以上が外国籍という地区で、「教室」にはフィリピン、中国、ブラジルなど様々なルーツと様々な困難、そして様々な希望を持った子どもたちが集まる。主な目的は学校がカバーしきれない個別の学習支援だが、自ずと家庭の問題も含めた手助けや安心できる居場所としての機能も持つようになった。著者らボランティアは子どもの隣に座り、話し相手になったり宿題の手伝いをしたりする。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2024年2月号