眞子さまは不幸になる権利もある

三浦 瑠麗 国際政治学者
鈴木 涼美 作家・エッセイスト
ニュース 皇室
私たちは、眞子さまの「小室圭さん」という“選択”を尊重してあげたい

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▶︎小室さんが眞子さまについて「月のように静かに見守って下さる存在」と発言したことについて。鈴木氏は「そんなことが言えてしまう男に女は夢中になる」と語る
▶︎三浦氏は「そもそも結婚が『人生の最終解決』手段みたいな価値観は、人を不幸にする」と語る
▶︎自分で人生の選択をする行為そのものが重要で、選択を積み重ねていくことで初めて生きる意味を見いだせる

眞子さまを「月のような存在」と?

 三浦 鈴木さんと最初にお目にかかったのは、橋下徹さんの番組でしたよね。コラムなどは拝見していたのですけど、下の名前の「涼美」がどういうふうに読むのか分からなくて……(笑)。

 鈴木 たまに、「いつもコラム読んでます、リョウミさん」って読者の方から声をかけられます(苦笑)。

 三浦 それでご飯などもいっしょに行ったりして。恋愛や性、政治や社会問題について、新聞記者やAV女優としての経験も織り交ぜて綴った鈴木さんのコラムは、中毒性がありますよね。私の夫はネット記事をあまり読まないのですが、鈴木さんのコラムは必ず読んでいるみたい。あと、娘のシッターさん、70代の女性なんですけど、その方も涼美さんの本を熱心に読んでらっしゃる。

 鈴木 ウソ~! ありがとうございます。私の読者って、若い男の子や高齢女性はあまりいないので、すごく嬉しいです。

 三浦 そんな私たちが今回、文藝春秋編集部に提案された対談テーマが、秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんのご結婚問題でした。

 2017年9月、宮内庁がお二人の婚約内定を発表しましたが、同年末に週刊誌が小室さんの母親に関する400万円の「金銭トラブル」を報道して祝福ムードは一転、18年2月にご結婚関連儀式の延期が発表され、今日まで至っています。小室さんは金銭トラブルについては、「解決済み」だと文書は出しましたが、会見をおこなわなかったために世間の批判が高まったとされます。ただ、昨年11月、秋篠宮さまが誕生日会見で、お二人の「結婚を認める」と発言されました。

 鈴木 この問題に関しては、普段から皇室の専門家だけではなく、様々な種類の人が語りたがりますよね。私はというとダメンズ目線というか、男性分析という点で小室さんにすごく興味を持っていました。

 三浦 なるほど。私が個人的に印象に残ったのは、お二人の婚約内定時の会見でした。眞子さまが小室さんに惹かれた理由として、「太陽のような明るい笑顔」を挙げられ、それを受けて小室さんは眞子さまを「月のように静かに見守って下さる存在」と譬えていたんですね。ああ、そういう旧い男女観なのか、と。自己愛が先に立つのだなと思いましたね。

 鈴木 あれは驚きの発言でした。日本のプリンセスを、「自分の光が投影される月」だと言いきっちゃうってすごくないですか?

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鈴木氏

 三浦 太陽の光がないと、月は輝けないですからね。

 鈴木 普通に考えれば、眞子さまにそんなことは言えないですよね。でも、そんなことが言えてしまう男に女は夢中になるんですよね。

 三浦 そうそう、一部はね。

 鈴木 これは一般的な男女分析ですけど、女医さんのような社会的地位の高い女性がホストクラブにハマる例は、昔から一定数あります。できるホストはたとえ中卒でも、女医さんに対して自分を卑下することなく、「お前は俺がいないと駄目だ」とあっけらかんと言えてしまう。自分より100倍も、学歴やお金がある女性に向かってです。この手の男に、やっぱり女は弱いですよね。そういう男をたくさん見てきた私としては、小室さんは似たタイプだなと感じました。だからこそ、「海の王子」にもなれたんじゃないですかね。

正義とプライド

 鈴木 ただ、大衆が小室さんを自分の“物差し”で測るのは、限界があるとも思っているんです。

 私はこれまで“社会の下”のほうで生きてきたので、本当にいろんな人間を見てきました。ぱっと見で悪人でも、違う方向から見たら善人だったりする例はいくらでもあります。例えば、女を騙して金を搾り取り、後はゴミのように捨てるホストでも、実家の母親にせっせと仕送りしていたり。つまり、一見道徳に反した人間でも、彼らなりの正義とプライドを持っているんですよ。

 小室さんなら、400万円の借金問題。あの金額は普通に考えれば、多少無理をすれば返済できるレベルですよね。「なぜそれをしないのか」と皆、怪しさを感じている。でも違う角度からだと、別のストーリーが見えてくるかもしれません。

 三浦 400万の話は、私も理解できませんでした。小室さんは米国留学前、弁護士事務所にパラリーガルとして勤めていたじゃないですか。事務所にお給料の前借りをして、4~5年くらいかければ返済できたと思うんですよね。でも、もしかしたら小室家は、パズルのピースが一つでも欠けるとガラガラと崩れるような、ギリギリの経済状況でやってきたのかもしれない。世間は「400万くらい返せばいいのに」と思うかもしれませんが、あの金額は、小室家にとってはものすごく高いものなのかもしれないと。だからお金というものにこだわるのかもしれない。

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三浦氏

小室圭さんの「謎」

 鈴木 お金を巡る人間関係って、外から見るだけでは分からないですよ。私、フェイスブックで「キャバクラの勤務後に彼氏と待ち合わせして……」と、10年以上前の話を投稿したことがあるんですよ。そうしたら当時のお客さんから「あの時『彼氏いない』と言ってたから通ったんだぞ。その分の金返せ」って。

 三浦 なんと小さい男だ(笑)。

 鈴木 あの時、男性が弁の立つ人だったら、私に完全に非があるように世間に語ることが出来たかもしれない。結局それ以上連絡は来なかったんですけど、「返せ」って言われても、びた一文も払いたくないお金ってありますよね。小室さんに対する「謎」も、探せば無限に出てきちゃうわけですけど、安易に自分の常識を当てはめてストーリーを作りすぎるのもどうなのかと思います。

 三浦 小室さんのストーリーとしては、“プライズ・コレクター”という見方も出ています。要は小室さんが、お金や地位や名誉が大好きな人間で、それ目当てでプリンセスの眞子さまと結婚するんじゃないか。だったら「けしからん」と。

 ですが、これが男女逆転した場合を考えてみたらどうなのか。女性がお金や地位や名誉を求めて結婚するのは、ある種、よくあるパターン。だったら紀子さまのときに世間はどう反応したのでしょう。「3LDKのプリンセス」とは言われたけれど、小室さんのような批判はされなかった。なぜ小室さんばかりが批判されるのか。女は上昇婚を目指していいけれど、男は駄目という世間の感覚は、何か気持ちが悪い感じがします。

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2017年の婚約内定会見

皇室の“結婚至上主義”

 鈴木 私が個人的に気になっているのは、皇室に生まれた女性が皇籍を離脱する際のシステムです。つまり「結婚すれば一般市民になれるけど、結婚しないと一般市民になれない」でいいのかと。結婚を使わないと、自分の人生が動かせないんです。これって“結婚至上主義”じゃないですか?

 三浦 ええ。要は結婚だけが唯一、自由になるための儀式として認められているわけですよね。

 鈴木 私だったら、「娘」から「妻」になる間に、もう1ステージ欲しいなと思ってしまう。最終的に一般市民になる運命なら、娘でも妻でもない、一般独身女性の期間が欲しいです。

 かつて女性たちにとっての結婚は、「出世」そのものであり、お金を得る機会であり、一気に上昇するための“飛び道具”でした。皇室の女性にとっては今でも結婚はそれに似ていて、一般の社会に泳ぎ出る唯一の手段なわけです。一般市民になりたかったら結婚するしかない。突拍子もないことを言うようだけど、「もしレズビアンだったらどうするの?」と心配になってしまう。

 三浦 これって大きな問題ですけど、あまり指摘する人はいないですよね。皇室の女性の中にも、早く一般人になりたいというお気持ちの方がいるかもしれない。

 鈴木 しかも、皇室の女性はお相手探しが難しいのに、お嫁に行かないと“行き遅れ感”も出てきてしまう。そうなると皇室に閉じ込められたままですよね。少なくとも現在、女性天皇や女系天皇が認められていないのであれば、成人した時にご本人にそのご意思があれば一般人になってもいい、という制度を作ってほしいです。

 三浦 何かと話題の「結婚一時金」も、成人して一般人になる時点で支払われていい。

 鈴木 そうそう。皆は「結婚した途端、一時金がそいつ(夫)の懐に入るなんて許せない」と批判するわけですよね。まだ結婚相手が分からない状況で先にあげちゃえば、誰も文句は言えません。

 三浦 結婚の話になりましたけど、そもそも、結婚が「人生の最終解決」手段みたいな価値観は、人を不幸にするもとだと思います。完璧な男性なんてものは世の中に存在しないんですよ。女性をダメにしてしまう、不幸にしてしまう男はたくさんいますけど(笑)。結局、自分の人生の問題は自分で解決するしかない。だから女の子が結婚にあまり過大な夢を見るのはよくない。

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実家と“距離”をとる手段

 鈴木 そういう考え方って、崩れつつあるようで、いまだに崩れていない。なぜかと言えば、日本の女性には結婚以外の“飛び道具”がないから。これだけ社会的に自由になったのに、女性は会社や組織では「安心」や「安定」は得られず、家族を持つこと以外に選択肢がない。だから結婚に夢を見ちゃうんです。

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source : 文藝春秋 2021年2月号

genre : ニュース 皇室