「他人の死」を見つめて来た作家が「自分の死」に向き合う
余命宣告を受けた患者は、どのような思いで日々を送るのか。ノンフィクション作家として「生と死」を見つめて来た著者本人が、まさかの余命宣告を受けてしまう。では、どうすればいいのか。
著者の佐々涼子氏は、悪性の脳腫瘍を発病してしまう。この病気の平均余命は14か月だという。2023年9月の「あとがき」で、著者は、こう書く。〈五五歳の私は、人よりだいぶ短い生涯の幕を、間もなく閉じることになる。昨年一一月に発病した私は、あと数か月で認知機能などがおとろえ、意識が喪失し、あの世へ行くらしいのだ〉
著者がこう書いてから、数か月が経過した。佐々氏は、この書評がまだ読めるだろうか。
著者の告白に茫然となるが、著者は続いて、こう書く。
〈だが、ちょっと考えてほしい。それは誰もがいずれ通る道だ。老いも若きも、寿命の長い短い、そこに至る病気も様々だが、これは皆がいずれ向き合わなければならない、「人生の宿題」なのだ〉
それはその通りなのだが、余命宣告を受けた後で、どれだけの人が、佐々氏のように冷静に死を見つめることができるのだろうか。
佐々氏は、これまでも「他人の死」には向き合ってきた。2012年に出した『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』で開高健ノンフィクション賞を受賞。これは、海外で非業の死を遂げて日本に送還されてきた遺体に死に化粧をして遺族に引き渡す仕事に焦点を当て、話題となった。
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