力道山 俺の笑顔は千両だろ

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力道山(1924〜1963)が外国人レスラーを倒す姿は、敗戦で打ちひしがれた日本を鼓舞した。しかし、昭和38(1963)年、稀代のプロレスラーはナイフで刺され、早すぎる最期を迎えた。妻・田中敬子さんがその未完の志を語る。

 昭和38年12月15日、主人が39歳で急逝してから60年が経ちました。私が今も忘れられないのは太陽のような笑顔です。

 日本航空の客室乗務員だった私が主人と婚約を発表したのは昭和38年1月でした。当時21歳で仕事にやりがいを感じていましたが、主人の誠実で熱烈なプロポーズに心をつかまれ結婚を決意しました。そして6月5日にホテルオークラで1800人の招待客という挙式披露宴を執り行いました。

 婚約を発表する少し前から主人が住んでいた赤坂のマンション「リキ・アパートメント」で同居が始まりました。テレビ画面を通じたリング上では見られない素顔の「力道山」を知ったのは、寝室でした。

 主人はベッドの枕元に自らの笑顔の写真を飾っていたのです。満面の笑みで天を見上げる1枚に「俺の笑顔は千両だろ」とほほ笑んでいました。

力道山 ©時事通信社

 太陽のような笑顔と同時に思い出すのは、私だけに見せた涙です。

 大相撲の関脇まで昇進した主人が角界を引退してプロレスラーへ転向したのは昭和26年でした。1年余りの米国での修業を経て昭和29年2月19日、蔵前国技館で木村政彦さんとタッグを組んでシャープ兄弟と対戦した試合が開局まもないNHKと日本テレビで生中継され一気に国民的スターに駆け上がりました。

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source : 文藝春秋 2024年8月号

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