白井義男 先生と呼ばれたボクサー

具志堅 用高 元WBA世界ライトフライ級王者
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ボクシングで日本人初の世界チャンピオンとなった白井義男(1923〜2003)が晩年、共にジムを開いたのが、元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高氏である。

 白井義男さんのことは、ボクシング界の皆が「先生」と呼んでいました。後にも先にも「先生」と呼ばれたボクサーは白井先生だけです。

 恐らく現役時代、GHQ所属の生物学者であったアルビン・R・カーン博士に師事していたため、白井先生のことも「先生」と呼ぶようになったのだと思います。一方、先生は私のことを、出会った日から、80歳で亡くなるまで「用高ちゃん」と呼んでくれました。

 先生がダド・マリノ(アメリカ)を破り、フライ級王者となったのは、私が生まれる3年前の昭和27(1952)年5月19日です。返還前の沖縄・石垣島の実家にはテレビがなく、先生がベルトを獲得した映像を観たのは、上京し、協栄ジムに通い始めた18歳の頃でした。

白井義男 ©文藝春秋

 当時は猪突猛進タイプの日本人ボクサーが多い中で、足を使って相手を翻弄し、ジャブとストレートを駆使する、基本に忠実な先生のボクシングは衝撃でした。現代でたとえるなら井上尚弥のような華麗なボクシングで、実に先進的でした。

 会場は後楽園球場。マイク・タイソンや井上よりずっと前に、後楽園球場という屋外の野球場で試合を行い、3万とも4万ともいわれる観衆を集めたことも驚きです。

 初めて先生にお目に掛かったのは、私が世界ランカーとなった頃のこと。先生がTBSの運動部長とジムにいらっしゃいました。世界戦の解説を務めておられたので、視察が目的だったと思います。先生は「ナイスボーイ」と運動部長に言ってくれたようで、以来、私を可愛がってくださいました。時折、アドバイスをいただきましたが、いつも「ジャブとストレートを大事にして、あとは基本通りに」と言うぐらい。精神論はあまり口にされず、練習の重要性を説いてくださいました。

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source : 文藝春秋 2024年8月号

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