国鉄スワローズと読売ジャイアンツで活躍し、いまだ破られない“400勝投手”として球界に君臨した金田正一(1933〜2019)。親交のあった藤原しおり(元ブルゾンちえみ)氏がその晩年を語る。
この取材の前に、偶然にも金田さんのお墓参りへ行きました。生前、金田さんはお墓をもたないとうかがっていたんです。私のマネージャーがひょんなことからその存在を知り、私には何も言わず都内のあるお寺へ連れていきました。
最先端のシステムで自動ドアがウィーンと開くと、奥から「金田家」と書かれた墓碑が出てきて。金田さんだ! とすぐにわかりました。次の瞬間、涙ってこんなにすぐ出る? と思うくらいぼろぼろと溢れてきて……。“東京のおじいちゃん”に再び会えて、とにかくうれしかったです。
金田さんとは2015年、私が芸人としてまだ半人前だったころに出会いました。アルバイトをしていたホテルのレストランへ、朝の御膳を召し上がりに週に2〜3回、お一人でいらしていました。
初日にお店のオーナーさんから「うちには金田さんという元プロ野球選手の方が常連としてお見えになります。新聞を読まれるから、事前に奥の席へ置いてください」と“金田さんセット”を教えられました。
数紙の新聞にじっくりと目を通されるのですが、そういえばいつも老眼鏡を掛けていませんでした。「俺は老人特有の匂いがしないだろ?」とおっしゃっていたこともあります。高齢だから、と言い訳はなさらず、人前でもそうでなくても元気でいるために、食べものや運動に人一倍、気を配られていました。御膳ではご飯と納豆、梅干しを欠かさず「健康な体から出る笑顔は一番強い」という口癖がぴったりの方でした。
レストランで働く従業員はみんな金田さんと親しかったです。「ちゃんと食ってるか?」とたびたび声を掛けられ、アルバイトがないときは、職場の仲間も一緒に朝食をいただきました。たわいない話をしながら、とても楽しくて幸せな時間でしたね。そのとき私はネタの話もしました。気の強いキャリアウーマンが失恋した女性に、男性は地球上に「35億(人もいるのよ)!」と言い放つあのネタは「いいじゃないか」と最初に後押ししてくれたんです。
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