江戸川乱歩|薯蕷饅頭 東京・池袋「三原堂」

作家が愛した名店 第6回

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三原堂・齋藤貴俊専務 いわく「当時と作り方は変わらない」という(じょう)()饅頭。パッケージは原稿用紙のイメージだ(4個入り1120円) 撮影=志水隆

戦争でなかなか菓子の材料が手に入らない時でも、乱歩は三原堂に甘味を頼みに行った。 ©文藝春秋

〈この店は池袋名物のうちでも、光った存在の一つであろう〉(『豊島新聞』昭和27年4月20日)

 生涯で40回以上も転居を繰り返した“引っ越し魔”の江戸川乱歩が、亡くなるまで30年ほど執筆活動を続けた池袋。彼が地元紙に「ひいきの商店について」書いてほしいと依頼され、記したのが「三原堂」だ。

駅徒歩1分の好立地にある池袋 三原堂 ©文藝春秋

 あまり酒を飲まず、自宅で小豆を煮て、かき氷に乗せて食べていたほど甘党だった乱歩。店に着流しでフラリと来ては、店主と雑談しながら、時には熨斗に名前を書くこともあった。お汁粉でも餡蜜でも何でも好んだ乱歩が、中でもお気に入りだったのが、すった山芋と砂糖を米粉と合わせた生地と、上品な甘さの餡が特徴の薯蕷饅頭。番頭が家まで饅頭を届けに行くことも、しばしばあったほどだ。

乱歩宅の蔵の形の焼印付きどら焼や、ブッセも人気。 ©文藝春秋

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source : 文藝春秋 2023年11月号

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