かなしみ

エンタメ アート
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 ひっそりと内に行くほど深い沈黙を抱えている家のようです……闘病の果てに愛娘を失った友の手紙。なぜお前なんだ、俺では無いんだ……体を取り替えてやれない悶えが、声にならぬまま圧し潰されて便箋の間から零れ落ちる。すっかり心の裂けてしまった友の手を引いて、肩を抱く白い影が文字の間から立ち上がる。亡き人に導かれて、友は今、我が子を失った戦禍の痛みを重く捉え直している。このいのちが愛おしいのです──深く心の裂けた者達の声を、文字は伝えることができるか。世界はその声を、読むことはできるか。

(河野俊一『詩集 ストーマの朝』に触発された部分があります)

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source : 文藝春秋 2024年8月号

genre : エンタメ アート