美しい建築が壊されてゆく──2人は立ち上がった
鈴木 わぁ、素敵! ここで時間を過ごす方々は、思わず心の中でテオドラ邸に「残ってくれてありがとう」って思うでしょうね!
山下 今日はお越しいただきありがとうございます。15年前にはじめて見たとき、私はすっかり一目惚れしてしまって……。「日本一バラが似合いそう」なんて、“洋館好きゴコロ”がどうしようもなく疼いてしまいました。
鈴木 外観のきれいな水色は目を引きますね。それにしても、これだけの古いものを残すのは大変でしたよね。解体を阻止するまでの顛末を綴った漫画『世田谷イチ古い洋館の家主になる』(集英社、全3巻)も拝読しましたが、次から次に壁が立ちはだかって……。幾多の困難を乗り越え、この洋館を取り壊しの危機から救ってくださった山下先生には頭が下がる思いです。
山下 私の方こそ京香さんのニュースを見た時、「あっ、同志がいる!」とすごく嬉しかったです。
2019年、東京都世田谷区豪徳寺に佇む「旧尾崎テオドラ邸」は解体の危機にあった。“憲政の神様”と呼ばれた尾崎行雄の妻テオドラのため、明治21(1888)年、彼女の娘時代に父・尾崎三良男爵が建てた洋館で、築130年超と都内最古級を誇る。同じ街に住む漫画家の山下和美さんは解体を阻止すべく、一般社団法人「旧尾崎邸保存プロジェクト」を設立。SNSやクラウドファンディングを駆使し、保存に奔走した。同洋館は現在、一般公開されている。
俳優の鈴木京香さんもまた、解体目前の建造物を救った。昭和27(1952)年に渋谷区西原に建てられた「ヴィラ・クゥクゥ」。建築家・吉阪隆正が友人である仏文学者の近藤等夫妻のために建てたこの家を、2021年に私財を投じて買い取り、改修して一般公開することを決めた。
※「旧尾崎テオドラ邸」「ヴィラ・クゥクゥ」を紹介したグラビア「2人の人生を変えた 名邸へようこそ」も、ぜひご覧ください。
山下 私はテオドラ邸に惚れ込むあまり、近所に新居まで構えてしまいました。以前からこの洋館に、何か気品のようなものを感じていまして。
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