日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。
★楽天携帯の誤算
10月1日から携帯電話事業へ参入する楽天(三木谷浩史会長兼社長)に誤算が生じている。三木谷氏の右腕である山田善久副社長が管掌する子会社、楽天モバイルによる基地局の工事計画が大幅に遅れていることが判明。サービス開始当初の利用者制限をせざるを得なくなったのだ。
かねてより、楽天の携帯参入は既存の通信大手からは疑問視されていた。ソフトバンク(宮内謙社長兼CEO)が06年に英ボーダフォンの日本法人を1.75兆円で買収し携帯電話事業に参入したときは、ボーダフォンの顧客基盤を生かせたが、楽天は全くの新規参入と言っていい。
14年から始めた、通信事業者からネットワークを借りて展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)事業での蓄積はあるが、DMM.com(亀山敬司CEO)のモバイル事業を買収した分を入れても契約者数は約220万。MNO(移動体通信事業者)として展開するNTTドコモ(吉澤和弘社長)が約7,900万、KDDI(髙橋誠社長)が約5,600万、ソフトバンクが約4,200万なのに比べ、雲泥の差だ。
またソフトバンクはスマートフォンがまだ根づいていなかった08年にアップルのiPhoneを先駆けて導入できたという追い風もあった。現在はスマートフォン市場が成熟期を迎えており、楽天は端末で差別化ができない。
それでも楽天が携帯電話事業の参入に意欲を示すのは、携帯が既存事業との親和性が高いと読んでいるからだ。2大柱とするネット通販と金融事業は、通信大手ともしのぎを削る分野。折からの政府による携帯料金引き下げ要請もあり、通信各社は通信収入以外の収益拡大を急いでいる。
楽天も携帯での契約を入り口にした利用者の囲い込み競争で商機を狙う。ただ、肝心の「楽天市場」の配送料を8月に3,980円以上の購入で無料にすると発表したことに対し、負担を強いられる側の店舗からは不満が噴出。足元がおぼつかない面もある。携帯と共倒れすれば、いよいよ将来は危うくなる。
★マツキヨに軍配のわけ
ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD、松本清雄社長)がココカラファイン(塚本厚志社長)と経営統合協議に入った。2020年1月末をめどに結論を出す。マツキヨHDは業界5位、ココカラは7位。統合すれば売上高1兆円を超える(19年度計画値)業界トップ企業の誕生だ。
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source : 文藝春秋 2019年10月号