ズルい親父

柳亭 小痴楽 落語家
ライフ ライフスタイル

著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、柳亭 小痴楽さん(落語家)です。

 今の私にとって親父とは、どんな存在か……一言で言ってズルい!

 子供の頃から、ああいう人間になりたいと真似をして生きてきた。私が一六歳の時に五三歳で半身不随になり、会話も五十音ボードに指を差し、お互い伝わっていたのかどうか。それでも脳はしっかりしていたのは有難いけど、哀しさ、もどかしさもあった。四年後に他界してからは、真似をしようにも、父は私の目の前にいない。今はただ、親父だったらああしたかな、こうしたかなと考えてしまう。もう父を越えることができないのだ。なぜなら、どんどん私の中で親父というものが美化され続けてしまっている。どんなに追いつこうとしても私自身が私の父を大きくしてしまい続けるのだ。そんな偉大な人間じゃなかったはずだ。今はまだうっすら覚えている生きていた親父の姿。それはそれはひどかったよ。

 たまにふらっと家に帰ってきたと思ったら、

 ――タバコ銭が無ぇんだ、二三〇円貸してくれ。

 そう言って小学生の私から小銭を借り、

 ――よし、お前それでタバコ買ってこい!

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2024年11月号

genre : ライフ ライフスタイル