著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、柳亭 小痴楽さん(落語家)です。
今の私にとって親父とは、どんな存在か……一言で言ってズルい!
子供の頃から、ああいう人間になりたいと真似をして生きてきた。私が一六歳の時に五三歳で半身不随になり、会話も五十音ボードに指を差し、お互い伝わっていたのかどうか。それでも脳はしっかりしていたのは有難いけど、哀しさ、もどかしさもあった。四年後に他界してからは、真似をしようにも、父は私の目の前にいない。今はただ、親父だったらああしたかな、こうしたかなと考えてしまう。もう父を越えることができないのだ。なぜなら、どんどん私の中で親父というものが美化され続けてしまっている。どんなに追いつこうとしても私自身が私の父を大きくしてしまい続けるのだ。そんな偉大な人間じゃなかったはずだ。今はまだうっすら覚えている生きていた親父の姿。それはそれはひどかったよ。
たまにふらっと家に帰ってきたと思ったら、
――タバコ銭が無ぇんだ、二三〇円貸してくれ。
そう言って小学生の私から小銭を借り、
――よし、お前それでタバコ買ってこい!
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source : 文藝春秋 2024年11月号