24歳で兜町に「投資ジャーナル」を創業、一時、運用資金は数百億円とも言われた中江滋樹(しげき、1954〜2020)。中江の評伝『兜町の風雲児』(新潮新書)著者の比嘉満広氏が、稀代の相場師の生涯を語る。
「自分で稼いで自分で全部使ってきたから何とも思っていない。金があったから田中(角栄)先生や三浦(甲子二〔きねじ〕)のオヤジなどたくさんの偉い政治家や財界人にも会えたし、きれいな女の子とも一杯遊んだ。金がなかったら今のボクはない。金があったから今のボクがある。自分でもボクの人生は数奇だと思っている」
2020年に私が中江にインタビューした際、彼がこれまでの人生を振り返って、こう語ったのが印象に残っています。葛飾区の安アパートに住んでいた中江は、そのあとすぐ、自身のタバコの不始末が原因で部屋から出火し、焼死してしまいました。彼の生涯は、数奇としか言いようがないものでした。
滋賀県近江八幡市に生まれた中江には、四つ年の離れた兄がいました。両親は兄を溺愛し、欲しいものは買い与えた。中江はそれを見て育って、小遣いはもらうのですが、物をねだるようなことはしなかった。むしろ兄への反発心からなのか、小遣いを自分で増やし、自分で買おうという意識が強かったようです。
その精神は長年、中江の根底にあったようで、基本的に彼はドケチ。株を動かす時も、使う金額を決めて投資する。自分が困るようなことは絶対しない、と決めていました。
父親が証券会社に勤めていたこともあり、中江は幼いころから投資に馴染みがありました。高校生の頃にはすでに、投資でまとまった額を稼げるまでになっていた。
数学に強く、私のインタビューでも「全国模試で3位になった」と自慢していたほど。自分の年齢にかこつけて、22歳で京都に「ツーバイツー」という「投資ジャーナル」の前身会社を立ち上げるのですが、この頃から、「古い慣習が残る証券界に科学と数学を持ち込むんだ」と、息巻いていたそうです。
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