投資家必読! さらなる円高株安に注意せよ

特集 日本経済に発想の転換を

岩本さゆみ 元為替ディーラー・経済評論家

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8月5日「日本版ブラックマンデー」はなぜ起きたか?

 急激な円高と株の暴落はなぜ起きたのか。この動きはいつまで続くのか。そして今後、どうなるのか。

 8月5日は「日本版ブラックマンデー」と名付けられ、早速その犯人探しが始まりました。利上げをした日銀、「円キャリー」取引の解消に動いた海外ヘッジファンドがやり玉に挙がっています。しかし彼らが本当に「戦犯」だったのでしょうか。結論から言うと、日銀の政策や海外ヘッジファンドの影響は皆無ではありませんが、これを8月5日の下落の「主因」とするのは筋違いだと思われます。

岩本さゆみ氏

 中央銀行は投資家のために存在するわけではありません。日銀は利上げをしないはず、と判断していたのなら、それは投資家の見通しの甘さでしょう。超短期筋の海外ファンドが日銀の利上げを想定できずに慌てた動きがあったとしても、そうしたファンドの誤算も含めて請け負うのが投資であり、全ての責任は投資家本人の判断に帰着します。

 AI主導の取引で相場変動が増幅したとも言われますが、90年代はITを駆使した自動システム売買によって、2000年代には高頻度取引(HFT)を含む高度なアルゴリズム取引の普及によって、相場変動が極端になったと言われました。いつの時代も自分より情報力に長け、スピードの速い投資家や投機家はいるものです。ちなみにAIが先行きを全て見通せたら、一方向に全て賭けるため、相場そのものが成立しなくなるはずです。今日も相場があるということは、AIも含め誰も完璧には予想できていない証左です。

 為替の動きを振り返ると、円高の流れは日銀が利上げする少なくとも3週間ほど前の7月上旬から始まっていました。8月5日の日本株の急落も、各国株式に波及したものの、日本市場を上回るような下落率の海外株は見られませんでした。日本人投資家のパニックが最後のトリガーを引いたと言えそうです。

効果を狙った日銀の不意打ち介入

 為替市場が161円台から157円台へと、円高に振れたのは7月11日のニューヨーク市場でした。この日は6月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、事前の伸び拡大予想に反して、対前月比は、コロナ禍で経済封鎖が実施された2020年5月来のマイナスへ、対前年比も21年3月来の最低水準となりました。これを受け、金利先物市場では連邦準備制度理事会(FRB)の9月利下げ観測が急速に強まりました。

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source : 文藝春秋 2024年10月号

genre : ニュース 社会 経済