『わたしが誰かわからない』中村佑子/医学書院
『別れを告げない』ハン・ガン/白水社
『積ん読の本』石井千湖/主婦と生活社
『わたしが誰かわからない』の著者、中村佑子は映像作家で、精神疾患の親や兄弟のケアを担う人たちの声を聞きたいと取材を始めている。
著者自身も精神疾患の母に付き添って精神科病院にいたことがあり、病む母の精神の浮き沈みで心を揺らした経験がある。自分ではない人の声を聞こうとする取材は、次第に自分の内側を見つめる旅へと変貌していく。
書くことは不定形のものを言葉の枠に押し込めることでもある。「ヤングケアラー」という言葉を使うことで見えてくるものもあれば、そこからはみ出すものもある。形にならない思いを表す言葉を探そうとする過程は苦しそうだが、表現者としての並外れた誠実さを感じる。
『別れを告げない』のハン・ガンは2024年のノーベル文学賞受賞者である。1948年に起きた済州島民の虐殺・弾圧、通称「四・三」事件を、事件を直接経験していない世代の女性2人を主人公に描く。小説を貫くのは鋭い痛みで、読者もその痛みにとらえられる。
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source : 文藝春秋 2025年1月号