誰と、何と繋がるか

文藝春秋BOOK倶楽部特別編 2023年「わたしのベスト3」

佐久間 文子 文芸ジャーナリスト
エンタメ 読書

『絶縁』村田沙耶香ほか著、藤井光ほか訳/小学館
『エクス・リブリス』ミチコ・カクタニ著、橘明美訳/集英社
『破流・永山則夫小説集成1』『捨て子ごっこ・永山則夫小説集成2』永山則夫/共和国

 アジア9都市の9人の作家が共通テーマで書いた短篇集『絶縁』がすばらしかった。

 終わりの見えないコロナと戦争の時代を象徴するのがまさに「絶縁」ということばだと、読みながら何度も思った。誰とつきあうか、つきあうのをやめるか。誰の意見を支持し、反対するのか。家族間の「絶縁」を書く人もいれば、社会の中の「絶縁」を取り上げたものも。

 無理に作品を集めた感じがまったくない。韓国のチョン・セランが提案したこのテーマで、一人ひとりの作家が心のうちを掘り下げ、取り上げる題材もスタイルも何ひとつ重なることなく、みごとに作品として展開させている。

 

 ミチコ・カクタニの文章が好きで、すばらしいインタビュー集『仕事場の芸術家たち』をくりかえし読んできた。ニューヨーク・タイムズの書評を長年、担当してきた彼女の書評を集めた『エクス・リブリス』を読み、批評眼の確かさと守備範囲の広さを改めて知ることになった。

 古典から現代文学、ノンフィクション、政治やスポーツの本も取り上げられる。時に辛口で、作家に忌み嫌われることもあるカクタニだが、「一人の本好き」として書いたこの本は、これでもかというぐらいの熱量で、面白さを読者に伝える。

 永山則夫が4都道府県で男性4人を射殺した事件から55年、死刑が執行されて26年たつ。

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source : 文藝春秋 2024年1月号

genre : エンタメ 読書