陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。
とても失礼な言い方ですが、主人(故・龍太郎氏)は陛下に対して息子のような親しみを抱いていました。山が共通の趣味で、同じ日本山岳会の会員でした。
深いご縁ができたのは、「世界水フォーラム」がきっかけです。水に関するさまざまな問題について話し合う、3年に1度の国際会議です。2003年に第3回大会が京都で開かれる際、運営委員長になった主人が陛下を口説いて、名誉総裁になっていただきました。第2回大会では、開催国オランダの皇太子が議長だったため、学生時代から水運を専門に研究されていた陛下に、主人はどうしてもお願いしたかったのです。
陛下はこの大会をきっかけに、水不足や水害の問題にもご関心を広げられたそうです。その翌年に国連が設立した「水と衛生に関する諮問委員会」でも、主人が初代議長を務め、陛下は2007年から名誉総裁をお務めになりました。
私の大切な思い出は、2015年にニューヨークで開かれた、この諮問委員会の最終会合です。陛下は英語で見事なスピーチをされました。2006年に亡くなった主人のことを皆さんが偲んでくださって、私も呼んでいただいたのです。夜のレセプションや日本の総領事公邸で開かれた夕食会で、陛下とご一緒しました。主人の思い出を気さくに話してくださったことが忘れられません。
今年4月に出版された『水運史から世界の水へ』(NHK出版)というご著書も届けてくださいました。主人も申していたのですが、陛下が水というグローバルなテーマに取り組まれるのは、とても素晴らしいことだと思います。
雅子さまは2009年、私が会長を仰せつかっていた婦人発明家協会が年に1度開いている発明コンクール「なるほど展」にお運びくださいました(新宿・京王百貨店)。いろいろな発明品をご案内すると、「愛子が喜びそうです」と、興味深そうにご覧くださいました。
ご静養が続いていた雅子さまにとって、3年ぶりの単独ご公務だったのですが、無事にお出ましいただいて安心したことを覚えています。
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source : 文藝春秋 2019年11月号