
「今年一年の相撲界を占う場所になる」と言われている、大相撲一月初場所。
一人横綱として相撲界を牽引していた照ノ富士が、とうとう力尽きて6日目に引退を表明した。横綱のバトンを受け渡されるかのように、先の九州場所で初優勝した大関琴櫻が綱取りに挑んだ場所でもあった。しかし5勝10敗というまさかの絶不調で終わり、一転、来場所はカド番大関に──。
あにはからんや、この初場所の優勝争いはおおいに盛り上がり、優勝決定巴戦にもつれ込んだ。その立役者は、千秋楽まで単独トップをキープしていた前頭十四枚目、カザフスタン出身力士の金峰山。さらに「ここ数場所で“化け”つつある」と評されていた王鵬だ。ちなみに「化ける」という言葉は、角界内で「覚醒したかのように強くなる」という意味だそう。新三役を狙う前頭三枚目の王鵬は、昭和の大横綱大鵬の孫として注目され続けてきた。これまでは、おっとりした雰囲気をまとっていたが、じわりじわりと実力を発揮。この初場所で初優勝のチャンスを迎えたのだった。
そこに「優勝が第一条件。内容次第では横綱昇進もありうる」と目されていた大関の豊昇龍が割って入る。すでに平幕相手に3敗していたものの、千秋楽には大関の意地を見せ、3人による優勝決定巴戦にもつれこませたのだ。
結果、鬼気迫る気迫とその経験値で、豊昇龍が逆転優勝し、賜杯を奪取した。晴れて横綱に昇進し、「気魄一閃(きはくいっせん)の精神で精進いたします」と口上を述べた。振り返れば、大関琴櫻の祖父は第53代横綱の琴櫻。豊昇龍の叔父は第68代横綱の朝青龍。そして第48代横綱大鵬の孫の王鵬──。かつて土俵を沸かせていた横綱らの血を受け継ぐ若武者たちが、今、令和の土俵に立っている。
手に汗を握る展開となった15日間を見届けた、元横綱白鵬の宮城野親方が、しみじみと語る。
「この初場所で横綱がひとり去って、また新しい横綱が誕生する。本当に相撲界って“ドラマ”ですよね。今年は、日本相撲協会が財団法人となって、ちょうど100周年の節目だそうです。2025年は、なんだか……相撲界にとって歴史的な年になりそうです」
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source : 文藝春秋 2025年3月号