「今回の巡業が一番キツイなぁ」
力士たちが口々にため息をついていた。九月秋場所後の10月1日から27日まで各地を廻った秋巡業のことだ。関東、近畿、東海、四国などで25日間開催され、休みはたった2日という過酷さだった。相撲協会員ら総勢約200名がバス6台に分乗し、興行が跳ねるとすぐさま次の巡業地に移動を繰り返す毎日だった。
今回の巡業休場者は12人にも上り、新大関としての“お披露目巡業”だった大の里や、土俵入りや“綱締め実演”の大役を果たす横綱照ノ富士も途中離脱。「今回、一番長いバス移動は和歌山市から徳島県那賀郡までの約5時間。一般人でも足腰が痛くなる長時間移動が続くんです。足腰に慢性的なケガを抱えている力士たちは悲鳴を上げています」
そう同行する行司はいう。通院治療は、もちろん巡業中は中断せざるを得ない。
アスリートにとって大事な三原則は「運動」「食事(栄養)」「休養」だと言われるが、食事面でも恵まれているとは言えまい。平成初期までは巡業地各地で力士ら自らがちゃんこを作り賄っていたが、現在は仕出し弁当が主だ。
「もちろん勧進元の方が精一杯の豪華なお弁当を用意してくださるんですが、毎日コロッケやとんかつなどの揚げ物ばかりなんですよ。冷えてしまっているし、白米なんて割り箸を刺すとそのまま持ちあがるんです(笑)」
関取たちは諦観し、笑い話にするほどだ。しかし夕飯はと言えば、宿泊先にビュッフェ方式で用意されていたり、ここ最近は「夕食代 一律5000円」が支給されることも多い。これは番付に関係なく幕下以下の力士も同額で「幕下の巡業手当は1日3000円ですが、それより多くて嬉しいです!」との明るい声も。
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