「小学校3年生から相撲を始め、ずっと横綱になることだけを夢見てやってきました。横綱を目指す体力と気力がなくなったので引退を決めました」
元大関の貴景勝がきっぱりと言う。その傍らで伏し目がちの師匠――元隆三杉の常盤山親方が愛弟子を思いやった。
「度胸があって精神力も強かった。膝、足首、胸、最後は首をケガをして、大関になってからは特に満身創痍の体でした。月並みですが、『もうご苦労様』と」
175センチの小さな体で突き押し相撲に徹し、大関の地位まで上り詰め、幕内優勝は4回。カド番だった名古屋場所で負け越して大関の地位から陥落、関脇として10勝すれば復帰できる特例があるものの、秋場所では初日から連敗して休場し、大関復帰は叶わなかった。元大関が平幕力士として土俵に上がり続ける例も珍しくない昨今、貴景勝は28歳の若さで潔く引退を決意したのだった。30代後半でいまなお活躍する力士もいる中、その若さを惜しむ声には、
「年齢で相撲を取っているわけではないですから。自分が目指すものに手をいっぱい伸ばしたんですけれど、届きませんでした。だから、ここが引き時だな、と」
唇を震わせながら言葉をふり絞る。
「後悔はまったくないです。もう燃え尽きたので。素晴らしい相撲人生でした」
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source : 文藝春秋 2024年11月号