いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
2025年シーズン、大谷翔平選手は2度目の右肘手術を経て、投手として再びマウンドに立ちました。6月には復帰早々、メジャーでの自己最速となる101.7マイル(約163.7キロ)を記録。30歳を越えてなお自身の球速を更新できるのは、驚異的としか言いようがありません。ただ投手としての復帰初年度ということもあり、2025年は試行錯誤の年だったのではないかと思います。本当の意味での「二刀流」復活は、2026年シーズンになると見ています。
2025年シーズンの投手・大谷を見ていて興味深かったのは、投球スタイルの変化です。これまではストレート、スイーパー、スライダーの3つが主な武器だったところ、意図的にカーブやシンカーを多く投げるなど、投球の幅を広げようとしていました。抑えるためのバリエーションを増やす、あるいは変化球一つ一つの質を上げるという意味でも、マウンド上で調整を行なっているような部分がありました。
本来、投手としての大谷選手は「パワーピッチャー」。インタビューなどでも、2度目の右肘手術に踏み切った理由として、100マイル近い球を投げたいという、速球へのこだわりを語っていました。しかし従来の投球スタイルで投げ続けていれば、怪我のリスクが高くなります。そこで新しい投球スタイルを模索しているわけです。

とはいえドジャースのような強豪チームで、先発ローテーションに入り続けることは容易ではありません。山本由伸選手もそうですし、ブレイク・スネル選手やタイラー・グラスノー選手、これから出てくる若い選手たちとも比較したときに「やっぱり大谷だよね」と言われるような存在でなければ、先発ピッチャーとして出続けるのは難しくなります。
2025年8月、大谷選手のピッチング内容があまりよくなかった時期に、デーブ・ロバーツ監督は「ショウヘイは先発として見ている。ただ、ポストシーズンは試合を締めるクローザーとしての状況があるかもしれない」と語っていました。これは先発ピッチャーとしては「黄色信号」なのです。1回失敗しても大丈夫、2回目は黄色、3回目は……私も投手でしたから分かりますが、監督の言葉で危機感を持つということはよくある。大谷選手も間違いなくその辺りの危機感を持っているはずです。
私は二刀流をやったことがないので簡単にはコメントできませんが、もう少し投手として調整をする時間や、そこに集中できる時間があれば、と思います。ただドジャースのチーム状況を考えたときに、打者・大谷の存在感は無視できないものがあるので、そことのバランスを取りながらになるでしょう。
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