私は幼少期、父の仕事の都合で度々引っ越しをする家庭に育ちました。小学校在学中には4度転校しています。私の変化を好む性格はこの幼少期に形成されたものといえるかもしれません。高校卒業時には兵庫県西宮市に居ましたが、両親が先に東京に移っていましたので、後を追って上京し、東京大学に入学しました。動物由来のウイルスを研究して大学院博士課程を修了後、英国グラスゴー大学留学を経て東京大学で研究助手の職を得ました。しかし、新しい世界を求めて3年半で東京大学を飛び出してしまいました。その後は、ロンドン大学(UCL)、大阪大学、そして帯広畜産大学と渡り歩きました。
私は昔から自由な学風の京都大学に畏敬の念を抱いていましたが、幸運なことに2005年、京都大学に研究室を構える機会を得ました。助教授ながら研究室主宰者という稀有なポジションで、最長5年の約束でしたが、そのまま約19年間学生らとともに研究を続けることができました。学術面では古代ウイルスがほ乳類の進化に寄与することを明らかにしました。また、刑事事件の科学鑑定や新興ウイルス感染症への対応などを社会貢献として行ってきました。自分の思い描く京都大学の教員の理想に近い活動ができ、とても充実した日々でした。奇しくも2019年に新型コロナウイルス感染症が発生し、ウイルス研究者として意見を述べるために東奔西走することになりましたが、私は国立大学法人の教員として当然果たすべきことをしてきたと自負しております。しかしこの活動は京都大学からは理解されず、昨年5月に定年よりも約6年早く退職することになりました。
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source : 文藝春秋 2025年4月号