
■企画趣旨
生成AI(Generative AI)は、近年大きな進展を遂げており、さまざまな分野での応用が急速に広がっています。いくつか例を挙げると、カスタマーサポート分野での文書生成やコンテンツ制作の自動化、広告分野でのイラストや動画の生成、他にも医療における診断サポート、法務面での効率的な契約書作成など、生成AIの活用はビジネスモデルやビジネスプロセスを変える大きな可能性を秘めています。こうした中、担い手不足、長時間労働規制の課題に直面する建設・不動産業界において、生成AI(Generative AI)の活用を活用した、効率性の向上や新しいビジネス機会の創出に寄与することへの期待が高まっています。
その主なものとして
(1)設計とプランニングの自動化 (2)建設プロセスの最適化
(3)予測分析とリスク管理 (4)カスタマイズされた提案
(5)バーチャルツアーや3Dモデリング (6)自動契約書生成とドキュメント管理
(7)建物のメンテナンスと管理 (8)マーケティングと販売の最適化
(9)サステナビリティの促進 (10)新たなビジネスモデルの創出
など多くの可能性が挙げられます。
一方で、データの正確性や品質、デジタル人材の不足、法的な規制など課題も多く存在しており、業界固有のニーズやリスクを理解し、適切な技術とガバナンスを併せて導入することが重要です。また、AIの導入には段階的なアプローチを取り、適切なトレーニングやサポートを提供することが、成功の鍵となるのではないでしょうか。
本カンファレンスでは「建設・不動産」の生成AI活用の可能性と留意点に焦点を当て、最先端の技術動向、活用事例を検証し、新たな価値を創出していく道筋を考察した。
■基調講演
AI政策 ~イノベーションの促進とガバナンス

経済産業省 商務情報政策局
情報処理基盤産業室 情報政策企画調査官
船越 亮氏
2001年特許庁入庁。特許庁審査官・審判官として、情報通信、半導体、医療機器等の審査・審判に従事するとともに、特許出願技術動向調査、特許情報プラットフォーム(現J-PlatPpat)の企画、スタートアップ・大学の知財戦略支援、特許審査の品質管理を担当。また、OECDエコノミスト、大阪大学大学院医学系研究科知財戦略室長(特任准教授)等を歴任。2024年4月より、AI政策を担当(現職)。
◎我が国におけるAI政策の概要/AIに関する経済産業省の取組
2019年に内閣府が取りまとめた『人間中心のAI社会原則』は、AIが「社会に多大なる便益をもたらす一方で、その社会への影響が大きいゆえに、適切な開発と社会実装が求められる」と指摘している。23年のAI戦略会議での『AIに関する暫定的な論点整理』では、AIの開発・提供・利用を促進しつつも、リスクへの適切な対処「ガードレール」が必要であると言及している。こうした流れを受けて、総務省と経済産業省は24年に『AI事業者ガイドライン』を公表した。
AI政策の3つの柱は、(1)AIのイノベーションとAIによるイノベーション (2)AIの安全・安心の確保 (3)国際的な連携・協調の推進、の3つだ。(1)は研究開発力の強化/AI利活用の推進/インフラの高度化/人材の育成・確保 (2)は自発的ガバナンスと制度の検討/AIの安全性の検討/偽・誤情報への対策/知的財産等 (3)はグローバルなAIガバナンスのルール作り、イノベーション創出を引き続き主導/企業間連携、産学連携、国際連携等を包含する。
生成AIは、従来のAIでは不可能だった様々な創造的な作業を人間に変わって行える可能性があり、今後の我が国の産業における生産性向上やイノベーション創出のカギとなる技術だ。ホワイトカラー業務を中心に1/4を自動化する可能性がある、との調査結果もある。さらにはロボットへの適用も進む見通しだ。
オフィス・事務サポートや法務、建築・エンジニアリング、ビジネス・金融オペレーションといった業種ではAIによる自動化の可能性がある業務割合が高い、という調査結果もある。また、生産性成長率と実質GDP成長率には一定の相関関係があり、生成AIによる各産業の生産性向上が、我が国の経済成長を牽引しうる。
2030年における生成AI市場の世界需要額は29.5兆円(2110億ドル)で、23年から年平均53.3%増。国内は1.7兆円で、同年平均47.2%増だ。それに伴い、生成AIの開発・利活用に必要なインフラ需要は世界的に大幅に拡大。30年には国内で、サーバー・ストレージだけでも約1兆円、23年に比べ約3倍となる見通しだ。
20世紀末のインターネット革命で存在感を示せなかった日本は、いまデジタル赤字の拡大に直面している。AI革命が生じる中、全面的な海外依存が進めばデジタル赤字は更に拡大する恐れがある。逆に、AI革命でバリューチェーンが再構築される中、各レイヤーで市場ニーズを捉えられれば競争力を確保できるチャンスだ。

日本の民間企業では教育、広告、材料開発、ヘルスケアなどの分野でのAI利活用が始まっている。PwC社の調査によると、企業における生成AIの利活用において、米国企業は91%が活用中または推進中となっており、日本企業の67%に比べて多い。なお、生成AIの活用指標として、日本、米国ともに「社員生産性」を最重要視している。他方、次点が日本は「工数・コスト」であるのに対して、米国では「顧客満足度」となっている。
経済産業省では生成AIの開発力強化のために、コア技術である基盤モデルの開発力強化に向けた計算資源の提供支援/国内外の開発者同士の交流促進/AIの本格利用を志すユーザーやモデルの性能に寄与するデータの保有者等との連携促進、などを行っている。本プロジェクト「GENIAC」の構成要素は、計算資源/データ/ナレッジだ。※各具体例紹介あり
これまでは、インターネット等のオープンなデータを活用して生成AIの開発をキャッチアップしてきたところ。今後は、各組織内に閉蔵されていたり収集が未進捗のために活用が進んでいないデータの活用を促進し、AIの継続的な利活用に寄与し、競争力があるAIの開発を促進する。そのために、複数のAI開発者とデータ保有者間のデータのやり取り等における課題解決に資する実証事業を(公募・採択にて)実施し、その事例・成果を広く共有していく。
また、冒頭述べたようにAI事業者ガイドラインも策定した。基本的な考え方は、(1)事業者の自主的な取組の支援 (2)国際的な議論との協調 (3)読み手にとっての分かりやすさ。進化をキャッチアップするために随時更新・公開予定だ。下記スライドを参照。

AI事業者ガイドラインでは、AIの事業活動を担う主体・パターン例や、AIによる便益・AIによるリスクを確認し、各主体に共通の指針として整理している。各主体が取り組む事項としては、人間中心/安全性/公平性/プライバシー保護/セキュリティ確保/透明性/アカウンタビリティ。社会と連携した取組が期待される事項としては、教育・リテラシー/公正競争確保/イノベーション、である。
なお、AI利用者はAI提供者が意図した範囲内で継続的に適正利用し、必要に応じたAIシステムの運用を行うことが重要であり、より効果的なAI利用のために必要な知見を習得することが期待される。
◎AIの安全性への取組
国際的にAIガバナンスの重要性が共有される中、24年のAI安全性サミットを契機に「AI安全性」をキーワードにガバナンスの深堀に関する議論が進む。我が国でも独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が24年にAIセーフティ・インスティチュート(AISI)を設置。国内外のAI安全性の知見のハブとして、国内外の関係機関とのネットワーキングを進めるとともに、AISIの安全性評価能力を確立しながら、安全性評価のためのガイダンスの作成等を目指す。
米国、英国、EU、カナダ、韓国など世界各国でもAISIの設立が進む。日本のAISIには、日米クロスウォーク(米国NISTのAI Risk Management Frameworkと日本のAI事業者ガイドラインの相互関係を確認)や、AIシステムの安全性を評価する際の基本的な考え方を示した「評価観点ガイド」、AIシステムの安全性を評価する一手法の基本的留意事項を示した「レッドチーミング手法ガイド」、といった取組がある。詳細は各ウエブサイトを参照されたい。
■特別講演(1)
東急不動産ホールディングスにおけるDX推進、生成AI活用の現在地
~デジタルで高める『街』の魅力-生成AIの期待と課題~

東急不動産ホールディングス株式会社
グループDX推進部 統括部長
(兼)TFHD Digital株式会社 取締役執行役員
兼久 隆行氏
1995年、東急不動産に入社後、リゾート事業本部、ゴルフ業務、部門管理業務などの担当を経て、2000年10月より新規事業としてイーウェルの会社立ち上げに参画。福利厚生代行サービス「WELBOX」の企画運営を担当。2016年より再びイーウェルに出向し、常務取締役として一般管理、企画・IT部門などを管掌、2023年4月よりTFHD digitalの経営に参画し、現在に至る。
東急不動産ホールディングス傘下のグループは、「WE ARE GREEN 誰もが自分らしく輝ける未来へ」をグループ経営ビジョンとして掲げ、資産活用型ビジネス(都市開発・戦略投資)と人材活用型ビジネス(管理運営・不動産流通)を展開している。
東急不動産ホールディングスは「GROUP VISION 2030」のもと、強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築を長期経営方針とし、環境経営とDXを全社方針としている。DXビジョンのキャッチフレーズは「Digital Fusion デジタルの力で、あらゆる境界を取り除く」。あらゆる生活シーンの融合/オンラインとオフラインの融合/事業・組織の枠を超えた融合を目指している。
◎生成AIの活用事例(社内)
ChatGPTの活用について。データ漏洩リスクを可能な限り低減するため、ChatGPTの自社専用環境を構築し「TLC Chat」として2023年10月より全社員が利用開始し、24年6月にはgpt-4oに切り替えた。24年10月には利用率(1カ月に1度以上利用した人の割合)は全社平均で33%に到達した。
ファイルサーバー(BOX)に格納されたデータを基に、TLC Chatに回答を生成させ、社内情報に基づいた文章を生成している。例えば、部門独自マニュアル等からの回答生成/株主総会想定QA作成時のたたき案作成/有価証券報告書、リリース案文等を対外公表資料から回答生成、などだ。
生成AI利用初心者にありがちな「何を入力したらよいかわからない」の声に対応するため、ワンクリックでプロンプト入力ができるプロンプト集を導入。「AI Blog」により生成AIに関する最新情報の提供を行ったり、部署ごとに利用説明会を実施したりしている。また、音声認識AI+生成AIの技術を活用した文字起こしツールを導入。TLC Chatと組み合わせて利用することで、議事録作成の簡素化も行っている。
画像生成AIの活用も開始している。「テキスト指示による画像生成」および「画像から画像を生成できる」画像生成AIをトライアル導入し、計画部など、建物計画・改装を行う部署を中心に検証中だ。
◎生成AIの活用事例(サービス)
東急リバブルでは、ベンチャー企業と共創し、マンションや土地・戸建ての価格査定AIを開発した。自信度の低いものは査定担当者に判断を委ねる点が特徴で、業界トップレベルの誤差率を実現し特許も取得している。ビジネスホテルの東急ステイ全店舗にはアイシン社が開発した音声認識システムを導入、22カ国の言語でタイムリーな意思疎通を可能にした。
東急リゾーツ&ステイでは、運営するホテルで課題のあったシフト作成とアルバイト募集作業の負担を軽減するため、AIを活用した人材マッチングプラットフォーム「TRS-Work」を構築した。
◎町づくりにおけるデジタル活用事例
TFHD digital社では、スタートアップ企業との協業で地域体験をアップデートさせるエリアマネジメントツール「Machi-wai」を開発し、24年に2月にリリース。来街者の利便性向上や回遊促進を実現している。DX人材が不在でもにぎわいづくりのヒントが得られ、街の回遊性を高める施策を簡単かつ低予算で可能にしている。
東急不動産傘下のニセコでは、国内初のスキーNFT「Niseko Powder Token 2.0」の提供・販売を行っている。渋谷においても、“Digital Fusion SHIBUYA”というキャッチフレーズのもとで広域渋谷圏を世界一イノベーティブな街へ変革させるさまざまな取組を行っている。デベロッパー初のコミュニケーションアプリ「SHIBUYA MABLs」はその一つだ。また、ソフトバンク社と共同でスマートシティの新たなモデルケースの構築に向け、生成AIを活用して来街者の行動変容を促す共同実証を開始した。
DX推進と生成における期待と課題を下記スライドにまとめた。社内の業務を理解し、かつDX知見を持つブリッジパーソンの育成に取り組むことが肝要と考える。

■特別講演(2)
AIと共に挑む建設DX、そして事業DXが創る新たなカタチ
~3種のDXの取組みを中心に~

鹿島建設株式会社
デジタル推進室長
真下 英邦氏
1997年に鹿島建設株式会社へ入社。建設業のデジタル化に長く携わった後、グループ会社の取締役にて企業経営に携わる。鹿島建設に戻ってからは、経営戦略部門にて中長期のグループ経営計画の立案を担当した後、2021年1月デジタル推進室の設立と共に現職に就き、現在に至る。
◎建設業とDX
建設業は、人々の暮らしに近い部分で「安心・安全」を支え、「快適な環境」を創造して提供する役割を担っている。昨今は都心の再開発や半導体をはじめとする生産施設など建設需要が高まる中、深刻な人手不足の影響で、従来の方法では対応できず、社員、協力会社も含め、全国からリソースを結集し対応している。また、気候変動、災害激甚化、世界秩序の変質、物価・コストの上昇など、業界が取り組まなければならない課題は多い。
成熟産業と言われる建設業だが、計画段階から調達、施工、運営維持に至る建設プロセスの中には、根本的な見直しや改善など、できることが限りなくある。こうした課題の解決には、AIやロボット、BIM※1、建設アプリ、デジタルツイン※2などの先進デジタル技術の活用が不可欠であり、施工合理化(ロボット・遠隔・自動化等)/施工管理・管理業務の効率化/新たな価値創出/サステナビリティなどに建設各社が勢力的に取り組んでいる。そこでは、建設業の実態や特性に則したDXやAI活用の進め方が肝要だ。
※1 BIM=Building Information Modeling コンピューター上に建物の3Dモデルを構築し、建物の企画・設計・施工・維持管理などの課程を一元管理する手法 ※2 現実の世界から収集したデータを基に、仮想空間上に現実世界を再現、シミュレートする技術
◎鹿島のDX
鹿島は、新たな中期経営計画の策定にあたり、社員及び役員からの意見を集めて、社会、顧客、技術、人の4項目で構成される鹿島グループの“ありたい姿”を言語化した。例えば、社会では「社会への貢献と作業の発展を持続的に両立させる」、顧客では「顧客の期待を超える価値をつくるプロセスとともに提供する」だ。このありたい姿の実現を目指し、建設/業務/事業の3種のDXを進めている。なお、下記スライド図のベースの部分「デジタル化」もDXを効果的に進めるためには基盤として不可欠だ。

建設DX(建設事業の強化、生産プロセスの変革)では、企画・設計・施工・運営管理の建設ライフサイクルを通じてデジタルツインとデータを活用し、顧客・社会の課題解決ニーズに応える。例えば、企画や設計のフェーズでは、生成AIによるアイデア出しやイメージ作成、自動設計の試行、及びBIMを活用した各種のシミュレーションに取り組んでいる。
施工フェーズでは、(1)連携×BIM (2)経験・ノウハウ×AI (3)建設×ロボット (4)管理業務×デジタルの4つの観点がある。(1)では、データをサーバーで共有しBIMを利用しての効率のよいコンカレントエンジニアリング、(2)では建設工事の危険予知活動にAIを導入、(3)では建設現場でのロボット活用による生産性向上、(4)ではAIとドローンによる資機材管理システムの稼働/技能者の作業時間自動把握システム、などを実現している。その他にも、建設資材の配送を効率的かつエコに運送するマッチングシステムの稼働を開始した。こうしたDXの推進は、日常的な業務効率化の積み重ねも大切だ。現場に近い社員が中心となって、ローコードアプリやSaaSサービスなどの先進デジタル技術を活用している。
事業DX(新たな価値の創出)では、建物ライフサイクルコストの最適化、AIを活用した建物ライフサイクル全体でのCO2排出量の正確な算定(カーボンフットスコープ)、HANEDA INNOVATION CITYでのスマートシティ(東京先進事例創出事業に採用)などに取り組んでいる。
業務DX(経営基盤、人材の変革)においては、グループ従業員2万人を対象に「Kajima ChatAI」の運用を開始した。入力した情報が外部の学習に利用されない、対話型の安全性を担保した鹿島グループ専用の環境を作り、検索/要約/翻訳/文案/プログラミングなどに活用している。
生成AIでは、LLMなどAIエンジンの進化がとても速い。新しい技術をいち早く取り入れて課題解決をスピードアップすると共に、自社のデータ整備とツールの使い方教育が大切だ。建設業は、一つ一つ違う構造物をそれぞれの場所で作る。社員一人一人が考えて行動し、安全・品質・工期などを確保して生産性を向上することが重要で、デジタル技術を活用したトランスフォームは不可欠だ。このため、事業とデジタルの双方に通暁した二刀流人材がDXを牽引する。建設業こそデジタル教育が重要だ。そのため、社員がスキルアップするためのデジタル人材育成体系を整備した。
鹿島でのDX推進のポイントをまとめる。
(1)課題・目的から実現手段としてDX・AIを捉える (2)社員のやりたい気持ちを大切にし、心をくすぐる施策を打つ (3)新技術を柔軟に取り入れ、デジタル・AI前提の仕事を構築する (4)まずは取り組んでみる、重複・標準化は後で考える (5)社員のデジタル活用能力向上が肝
AIには分析・要約から協働・信頼形成そして次の講演で詳述される画像生成まで、さまざまな種類・特徴がある。それぞれを上手く活用しながらDXを推進し、顧客や社会の課題解決を加速させていきたい。
■課題解決講演
建築・不動産業界におけるアドビ生成AIの活用
~環境の変化に伴うアイディエーション促進や効率化に~

アドビ株式会社
Creative Cloud Specialist
加藤 修一氏
インターネットベンチャー企業でWebデザインやディレクションを経験した後、2013年5月にアドビ株式会社に入社。主にエンタープライズの企業様向けに「Adobe Creative Cloud」を用いた業務効率化・ワークフロー改善をご提案。Webやモバイルアプリ制作から2D・3Dグラフィックまで、幅広くアドビソリューションのご紹介を行っています。
◎生成AIへ高まる注目
多様な課題とその解決策として生成AIが注目されている。今後2年間で制作コンテンツ量は5~20倍になる、意志決定者の42%が成果物の品質低下を憂慮している、といった業界を問わない企業全体の問題を浮き彫りにする当社の調査結果がある。
また、働き方改革の必要性と影響や労働力不足と建築コストの高騰、デジタル化の推進とサステナビリティの対応といった建築・不動産業界に特に影響が強い問題もあり、生成AI利用での作業効率改善に期待がかかる(調査では78%が生成AIの作業効率改善を感じている)。
デザインが主業務ではない「コミュニケーター」を含めて、全員で解決していく問題や課題の解決に生成AIを活用したい。画像生成AIである「Adobe Firefly」は長年AIに取り組んできたアドビのテクノロジーの延長線上にある。2023年のリリース依頼、130億枚以上の画像を生成。世界100以上の言語のテキストプロンプトに対応し、Web版のUIは世界20の言語に対応している。
◎画像生成AIの活用トレンド
建築・不動産業界で画像生成AIを利用することで拡がる可能性については下記スライドを参照。

労働時間の短縮/クオリティ担保/サステナビリティ/デジタル化の推進/コスト削減といった効果が見込める。
Adobe Fireflyでは、キーワードをもとにムードボード(イメージ)を作成、ターゲットオーディエンスのペルソナをビジュアルで表現、新規プロジェクトのイメージをビジュアルで表現、新規プロジェクトを提案するスライドのためのビジュアルを作成……といったことが、簡潔な日本語プロンプトの入力により可能になっている。手描きのラフスケッチやごく簡単なCGによる構成参照画像から、多彩・多様な画像を生成することもできる。※各イメージ画像紹介あり
建築物関連で言えば、「Adobe Photoshop」で培ってきた屋根、階段、壁などのパーツの認識能力が、簡潔なプロンプト指定での正確な画像生成に寄与する。一枚のラフスケッチを構成参照し、例えば“モダンなガラス張りの建物に夜景が反射している”といった「スタイル」を指示してその雰囲気を読み込ませることもできる。こうしたことは外観、内観を問わず可能で、内装であれば人物やオブジェを生成画像に配置することもできる。
また、すでに完成している建築物に「オブジェクト合成」機能によってAIが生み出す背景や人流を組み合わせることも可能。画像をドラッグドロップし、既存の背景自動削除と合成を行えるのだ。
前掲のスライドにも記載があるが、Adobe Fireflyは、マーケティング・広報・営業などのコミュニケーター(デザイナー・クリエイターとクライアントの間を取り持つ職種)が現場でのビジュアルコミュニケーション、マーケティングの効率化に活用できる。
なお、テキストから画像生成、テキストからテンプレート生成、字幕の自動生成などの機能を持つ「Adobe Express」や、文章の要約やインサイトの生成、質問への回答や利用目的に応じた文章共有などの機能を持つ「AI Assistant for Acrobat」を併用すれば、コミュニケーターの仕事のインパクトはさらに拡がる。
◎生成AIの安全性
生成AIは革命を起こす一方、企業は懸念を抱いている。著作権、プライバシー、セキュリティ、倫理、バイアスなどにまつわる問題だ。Adobe Fireflyは、「Adobe Stock」の高解像度・高付加価値の画像アセットを利用している。これらはオープンライセンス、パブリックドメイン画像であり、商用利用にも安心な設計だ。また、画像生成以外の拡張用途にも対応している。
Adobe Fireflyは知的財産権を尊重しており、権利毀損の可能性がある場合は「1語以上の単語がユーザーガイドラインを満たしていない可能性があるため、削除されました」といったアラートを出してプロンプト通りには画像を生成しない。また、オンラインコンテンツの信頼性と透明性を高め、誤報や偽情報に対抗することを目的とした取組み「CAI=Content Authenticity Initiative」に参画して“来歴(Provenance)”情報を通して信頼性を担保している。
生成AIを会社として定着するためのステップは、下記スライドを参照。段階を踏んで検討いただき、Adobe Firefly共々、生成AIを上手に活用していただきたい。

2024年11月20日(水) 会場対面・オンラインLIVE配信でのハイブリッド開催
source : 文藝春秋 メディア事業局

