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「子どもを最低3人産むように」「4人以上産んだ女性を表彰」 なぜ政治家は子どもな失言をするのか

桜田元大臣らの発言を振り返る

2019/06/07
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山東昭子 自民党・元参院副議長
「子供を
4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」
朝日新聞デジタル 2017年11月21日

 こちらは2017年のもの。山東氏の発言は大学教員や弁護士らでつくる「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」による2017年のワースト・ジェンダー差別発言に選ばれている。

山東昭子議員(中央) ©文藝春秋

 桜田氏、加藤氏、山東氏らの発言に共通しているのは、安倍政権が主張している「伝統的家族観」にもとづいたものだということだ。

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 男が外で働き、女が家を守って子どもを産み育て、祖父や祖母も一緒に暮らす大家族。安倍晋三首相は著書『美しい国へ』の中で「『お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ』という家族観と、『そういう家族が仲良く暮らすのがいちばんの幸せだ』という価値観は、守り続けていくべきだと思う」と記している。「いちばんの幸せ」は個人が決めることであって、誰かから押し付けられるものではない。

安倍首相のブレーンは「個人の尊重だけでは日本民族は絶滅」とも

 安倍首相のブレーンと報じられることもある伊藤哲夫日本会議・政策委員は「個人の尊重や男女の平等だけでは祖先からの命のリレーは途切れ、日本民族は絶滅していく」と語っていた(毎日新聞 2016年11月3日)。桜田氏はジェンダーフリーに基づく男女共同参画に反対している。

 山口智美モンタナ州立大学准教授は、日本会議ら右派の人々の主張について、「行き過ぎた個人主義が蔓延しており、修正が必要だ」「その結果、みんながわがままになって少子化が進むし、家族の崩壊が起こるしで、日本は大変なことになっている」と説明する(マガジン9 2016年7月13日)。女性がわがままになって子どもを産まないから、少子化が進んで日本が大変になっていると、この人たちは考えているようだ。

麻生太郎 副総理兼財務相
「いかにも年寄りが悪いという変な野郎がいっぱいいるけど、間違っていますよ。子どもを産まなかった方が問題なんだから」

BuzzFeed News 2月4日

 似た発言として、麻生氏のこの発言も挙げておきたい。「産まないことを『問題』だと批判するのは人権侵害につながる」(信毎ウェブ 2月9日)などと批判を浴びた。

麻生太郎副総理 ©文藝春秋

 発言の大まかな内容は、全世代型の社会保障制度への改革を行っていくために消費税増税への理解を求めるというものだった。麻生氏は2014年にも「高齢者が悪いというイメージをつくっている人が多いが、(女性が)子どもを産まないのが問題だ」と発言している。女性が子どもを産まないから消費税を増税せざるを得なくなったと言わんばかりだ。

 先の加藤氏の発言も、「新郎新婦には、必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」の後に「結婚しなければ、ひとさまの子どもの税金で老人ホームに行くことになる」という発言がついていた。いずれも少子化による社会保障をまかなう資金の不足という問題に際して、その解決策として女性に「もっと子どもを産め」と発言しているのだ。