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 ダニ族にはコテカよりも驚愕の伝統文化がある。女性は家族を失うと指を切り落とす儀式を行うのだ。日本にも指詰めというヤクザ伝統文化があるが、意味は全く異なる。

 まずは痺れで痛みを軽減させるために、切断する30分前に指を紐できつく縛る。指を切断後、出血を止め感染症を防ぐために切断部を焼く。聞いただけで身の毛がよだつ話だが、彼らはそうすることで愛するものを失って不安定になった心を痛みでまっとうな状態に保つのだとか。切り落とした指の回数だけ悲しみに耐えてきたのかと思うと切ない。現在、この儀式はインドネシア政府により禁止されているが、儀式を継続する高齢者も中にはいるらしい。

短くなった指を見せてくれる。見ているこちらが痛くなるくらい潔く切っている。
指同様に耳も切るそうだ。わわわわわ…。

 一通り村の慣習を見せてもらった後、ダニ族の案内でミリ山へトレッキングに向かう。おじいちゃんはピラモさん、お姉さんはアティさん。お二人とも可愛らしい名前だ。締った体が自然に馴染む姿を見た時、厚かましくもダニ族に親近感を覚えていた自分を恥じた。私の裸族はただのズボラ、彼らの裸族は美しい文化の継承で、全くの別物である。

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トレッキング中、撮影に快く応じてくれるダニ族のお二人。なんてかっこいいんだろう。

ダニ族はあと10年で消滅してしまう?

 ダニ族に会う前日、現地ガイドがもう一人の日本人観光客と一緒に夕飯に誘ってくれた。内陸で美味しい焼き魚が食べられるオススメのレストランで、塩味の効いたふわふわの白身が日本人の舌に合う。

 ダニ族の未来について、現地ガイドはこう言う。

「20年前は街中に沢山のダニ族がいたけど、年々減っている。今は50~60歳の高齢者しかコテカを付けていない。観光用の見世物にしたところで観光客が少なすぎて彼らは飯を食っていけないから、今の若者は継承せず現代的な生活にシフトしている。ダニ族の平均寿命が60歳。高齢者が亡くなったらダニ族は地球上から消えてしまう。ダニ族を見られるのは、もって10年だろう」

 伝統文化はいとも簡単に衰退する。それを私たち旅行者は残念がるけど、伝統を継承するも変化させるも彼らの自由だ。ダニ族が望んで生活を良くしていこうとする過程で伝統が失われたのなら、その変化は望ましいことだと思う。たとえアーチボルトがダニ族を発見しなかったとしても、きっと彼らの生活は変化しているはずだ。