「フェリーの8割が外国人観光客」というときも
現在、宮島フェリーを利用する人の多くは外国人観光客だという。日本人のほうが多くなるのは正月やGW、お盆くらいなもので、他の時期は外国人が大半を占める。時期によっては8割ほどが外国人観光客になることもあるそうだ。その理由は、外国人観光客がお得に鉄道を利用できるフリーパス「ジャパンレールパス」でこの宮島フェリーも乗れるから。
「来られるのは……もはやどこの国が多いとかはないですね。何か特別なイベントがあるのかと思うほどヨーロッパの方が多い日もあれば、インドとかアジア系の方が多いこともある。ありがたいことに世界遺産に登録されてからはとにかく世界中からお越しいただいています」(大田さん)
ほぼ同じルートを結ぶライバルに宮島松大汽船があるが、約10分の所要時間も180円という運賃も同じ。かつては競争相手として激しく乗客を奪い合ったこともあるようだが、今では“共存関係”。「いっしょにこの地域を盛り上げていきましょう、という関係になっている」(武安さん)のだとか。
120年以上の歴史 “鉄道連絡船”唯一の生き残り
JR西日本宮島フェリーのルーツをたどると、1897年に広島の実業家たちによって航路が開設されたことに始まる。現在の山陽本線を当時運営していた山陽鉄道が1903年にその航路の営業を引き継ぎ、1906年に山陽鉄道が国有化されてからは官営(国鉄)の宮島航路として長く続いてきた。
過去、国鉄は津軽海峡を結ぶ青函連絡船や本州と四国を結ぶ宇高連絡船、さらには関門海峡をゆく航路など多くの鉄道連絡船を持っていた。そのほとんどはトンネルや橋の開通、利用者数の減少などによって姿を消してしまい、現在“鉄道連絡船”として残っている国鉄系の航路は宮島連絡船ただひとつ。観光客輸送という他の航路にはない特色が、生き残りにつながった。そうした中でも“鉄道連絡船らしさ”はしっかりと残っているそうだ。