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「きっぷは鉄道と一緒に1枚で買えますし、全国のJRのみどりの窓口でもごく普通に鉄道のきっぷのように取り扱っています。ジャパンレールパスだけでなく、青春18きっぷでも乗ることができますよ。あとは特徴的なのは最終便と鉄道との接続でしょうか。宮島口から宮島までの最終便は22時42分発なのですが、それに接続する山陽本線の電車が遅れていたら出航を遅らせたり遅延時間によっては後続便を出したりしています。遅延列車の運行状況はJR広島支社の旅客指令から連絡が入りますし、逆に台風の接近などによる宮島航路の欠航などの運航状況もすべて旅客指令など関係各所に連絡体制もあります。あとは郵便輸送をやっているのも連絡船らしい特徴のひとつといえるかもしれませんね」(大田さん)

宮島側の宮島桟橋
宮島桟橋の切符売り場。フェリーの切符だけでなく、乗り継ぐ鉄道切符も購入できる

始発は朝5時台、最終便は夜22時台

 宮島へのフェリーというと観光客の輸送ばかりに目がいくが、実際には宮島に暮らしている人や働いている人の通勤通学のための交通機関としての役割も持つ。そのため、宮島フェリーは始発が朝5時台、最終便は夜22時台と松大汽船と比べても運航時間帯が長い。観光客だけでなく地元の人の日常の足――そういう一面も、“連絡船らしさ”といえるのかもしれない。

 現在、宮島フェリーは日中15分間隔、多客期には10分間隔で運航されており、日中の宮島行きは嚴島神社の大鳥居の方に大きく迂回する“大鳥居便”として走る。

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地元の人の日常の足でもある
フェリーの車両甲板。乗用車15台を搭載可能

「船はみせん丸・みやじま丸・ななうら丸の3つ。通常は2船体制ですが、多客期には3船がフル稼働して走っています。大鳥居便は少し遠回りになるのですが、エンジンの回転数を調整しているので約10分の所要時間は変わりません。お客さまはみなさん弥山を背景にした厳島神社とその大鳥居を真正面から見たいですから、船が傾くというと大げさですが、それくらいみなさん鳥居のある右舷側に集まるんですよ。」(大田さん)

 ならば運航にはずいぶんたくさんの人手をかけているのかと思いきや、基本的には船長と機関長の2人体制。船長は操舵室から離れることができないため、乗船・下船の案内は機関長と桟橋業務を委託している関連会社・JR西日本広島メンテックの社員が担当しているのだとか。

「船長はずっと舵から手を離せないですよね。比較的波は静かなところなのですが、それでも潮や風の影響を受けますから、停泊中も舵から手が離せない。航行中もずっと舵を取っています。大型船では、ふつうは出入港時以外は船長が自分で舵をとることはなくて、操舵手に指示をするものなんです。ただ、ウチでは2名体制ですから船長自ら舵をとっています」(大田さん)