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どんな病気になると「怒りっぽくなる」のか?

 実際、病気によっては、「怒りっぽくなる」という症状を示すものがあります。厚生労働省の「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」というウェブサイトの「心理面の症状/怒り」というページに、「『イライラする・怒りっぽい』状態になるのはどうしてですか」という項目があり、そこに次のような記載があります。

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 易刺激性や易怒性は、ほとんどすべての精神障害においてみられます。 たとえば認知症や脳血管障害、脳腫瘍などの脳器質性精神障害で、急に易怒性を呈することがあります。
 アルコール・薬物依存症では、アルコールや薬物の効果が切れてきた時や、覚せい剤など神経を興奮させる薬物を摂取した後に、易刺激性が強まることがあります。
 統合失調症でも、幻聴や妄想のせいで易怒性が高まることがあります。
 双極性障害の躁状態ではとくに易刺激性が目立ち、患者さんの言うことに反論しようものなら、すぐに怒りだしてしまいます。
 まれですが、うつ状態に対して投与された抗うつ薬の作用で、易刺激性が生み出されることもあります。

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 精神医学では、ささいなことで不機嫌な反応をしてしまうことを「易刺激性」、とくにすぐ怒ることを「易怒性」と呼ぶのですが、上記のような「脳」に関係する様々な病気で、怒りっぽくなる症状が現れることがあるのです。認知症などでもよく、「些細なことで怒りっぽくなった」という症状が、早期発見のポイントの一つに挙げられます。

前頭葉の“ブレーキ”が効かなくなると……

 なぜ、そうした病気で怒りっぽくなってしまうのでしょうか。そもそも人は、誰だって多かれ少なかれ「怒り」の感情を持つことがあります。しかし、頭に来たからといって、通常は危険なあおり運転をしたり、相手を殴ったりはしません。そんなことをしたら、自分が大変な目に遭いかねないことを分かっているからです。

 そうした冷静な判断をして、怒りを抑えているのが、思考や判断など脳の高次機能をつかさどる「前頭葉」という部分です。怒りの感情は、原始脳と呼ばれる「大脳辺縁系」というところで作られるのですが、それがそのまま表情や言動に出ないよう「前頭葉」が抑える役目を果たしているのです。

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 ところが、この前頭葉の機能が低下してしまうと、怒りを抑えられなくなります。たとえば、前頭葉が萎縮する代表的な病気の一つに、「前頭側頭型認知症」があります。この病気になると、社会性が欠如して万引きのような軽犯罪を犯したり、抑制が効かなくなって暴力をふるったり、同じことを繰り返したりするようになります(長寿科学振興財団 健康長寿ネット「前頭側頭型認知症」)。