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2019/09/21

 加えて、生体肝移植の場合は、「ドナーのリスク」という問題もある。病気の人を助けるために健康な人の臓器を提供し、それによってドナーが健康被害を受けたり、最悪の場合命を落とすようなことがあっては本末転倒だ。その意味でも脳死下での移植へのニーズは高まる。

移植医療に取り組みたいと考える医師を一カ所に

 こうした問題を解消するために何が必要なのか。市田医師は、国による思い切った施策が必要だと訴える。

「“国立移植医療センター”を作ればいいのです。そして、日本中の移植医療をここに集約させ、医師も患者もここに集める。現在はわずかな症例を全国の施設が分け合っているので、一つの施設でできる移植医療は多くても数例に過ぎない。しかも、一般医療の片手間でやらざるを得ない上、もし移植をやるとなれば、予定していた別の手術を延期しなければならないなどの無駄が多く、移植に積極的になりにくいのです。ならば移植医療に取り組みたいと考える医師を一カ所に集めれば経験も増え、より高度で専門的な移植医療が実現するはず。全国のドナーから提供された大切な臓器をいち早く移植するために、どこか空港の近くに移植医療センターを建設すれば、効率的な移植医療ができるし、そうした国の取り組みが国民の“移植医療への期待”を高めることにもなるはずです」

©iStock.com

 移植を待つ患者には、時間的な猶予はない。その中で、移植を希望する場合は、日本臓器移植ネットワークに3万円の新規登録料と、年に1度5000円の更新料を支払ってドナーが現れるのを待っているのだ。

「こうしたことは、法改正のような大きな出来事があると世論も盛り上がるけれど、それも瞬間的なもので持続しない。もっと持続的、継続的に移植医療が話題に上るようにする仕組みづくりが急がれます」

 移植医療は決して他人事ではない。いつ自分がドナーの登場を待つ身になるかもしれないし、いつ事故に遭ってドナーになるかもわからないのだ。

 この機会に免許証か保険証を取り出して、裏面をよく読んでほしい。

 そして、「提供します」でも「提供しません」でも構わないから、自分の意思がどちらなのかを考えてみてほしい。

 すべてはそこから始まります。

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