いまから12年前のきょう、2005年3月6日、愛知高速交通東部丘陵線が開業した。営業キロは藤が丘(名古屋市)~八草(豊田市)間の8.9キロ。同月25日に開幕した愛・地球博(愛知万博)へのアクセス路線となった同線では、「リニモ」という愛称が示すとおり、磁気浮上式リニアモーターカーが採用されている。磁気浮上式リニアによる営業運転は、これが国内“2番目”だった。

リニモ ©共同通信社

 リニモに採用された技術は、1970年代に日本航空が開発に着手した「HSST」(High Speed Surface Transportの略)という新交通システムをベースにしている。当時の国鉄(現JR)が超電導を用いたリニアの開発を進めていたのに対し、HSSTでは常電導が採用された。75年に無人車両の走行実験に成功。基礎実験を終えると、85年の科学万博つくば'85を皮切りに、各地の博覧会で来場者を乗せて運転が行なわれた。89年の横浜博覧会での走行は、会期中のみではあったが、日本で初めての磁気浮上式リニアによる営業運転となる。

 89年には実用化に向け、日航と名古屋鉄道や愛知県の出資する中部エイチ・エス・エス・ティ開発が設立、91年より名古屋市の大江実験線にてテストが進められた。この間、日航は撤退したものの、計画中だった東部丘陵線でのHSSTの導入が決まる。運営会社として第三セクターの愛知高速交通も設立され、先述のとおり万博にあわせて開業にいたった。

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 名古屋市営地下鉄と連絡する藤が丘駅から東に延びる沿線には、複数の大学や、長久手古戦場跡、トヨタ博物館、愛・地球博記念公園、愛知県陶磁美術館などの観光スポットも点在する。だが、万博閉幕後は利用者数が当初見込みを大きく下回り、苦しい経営が続いた。それも近年、利用促進に向けた取り組みもあり、改善しつつあるようだ。

愛知万博のキャラ、キッコロ(左)とモリゾー(右) ©共同通信社

 ちなみに愛知万博では来場者を、リニモだけでなく、JR中央西線が愛知環状鉄道に乗り入れて万博八草駅(現・八草駅)まで運んだ。このとき八草駅前に、万博会場へのシャトルバスとして、名古屋の市バスや名鉄バス、三重交通など近隣のバス会社から車両がかき集められていたのが、地元で育った筆者にはちょっと楽しかった。