昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

2019/12/25

渡辺三冠が急ぎ足で戻ってきた理由は……

 渡辺三冠の相手をしているのは、共同通信社の将棋チームを引っ張る津江章二さん。いつも明るくときどき熱い感じは、かの田辺忠幸さんを思い出させるものがある。

 盤面は57手目▲8三歩のあたり(盤面は将棋連盟モバイル棋王戦中継サイトで確認してください)。

 渡辺三冠が「△8三同飛に▲7五歩くらいだけど、これで手ができるとは思えない」とつぶやきながら駒を進めると、津江さんが▲7五歩にサッと△5二玉と寄る。

「そう、それがいい手なんですよ」と渡辺三冠。△5二玉は▲4一角の筋を消しながら戦場から離れる一石二鳥の好手。ほめられた津江さんは相当にうれしそうだ。

 渡辺三冠は用事があったのか席を離れて、しばらくして急ぎ足で戻ってきた。

「おれのとんかつとえびふらいのしっぽは?」。いや、そこにありますけど。

棋王戦挑戦者決定戦第1局、佐々木大地五段(左)がこれまで連勝を続けてきた本田奎四段(右)を破った ©共同通信社

「勝者組で2連敗して挑戦を逃した人は過去にいるんですかねぇ」

 将棋のほうは佐々木大五段がそのまま押し切り、挑戦権の行方は12月27日の第2局で決まることになった。余談ながら、少し早く会館に行ったおかげで、その第2局の観戦記を依頼してもらえた。こんなこともあるんですね。現場万歳。

 打ち上げ兼忘年会では対面に本田奎四段、隣に中村真梨花女流三段という席。本田さんが「勝者組で2連敗して挑戦を逃した人は過去にいるんですかねぇ」と言うので、歴戦の勇者を何人か紹介して差し上げた。挑戦者決定戦という場に立つだけで立派。もちろん勝てばもっと立派になれるし、その先もある。

 二次会は共同通信の池松達郎さん、スポニチの伊藤靖子さん、終局ギリギリで登場した観戦記者の相崎修司さんと。伊藤さんは最近いくつものナイスインタビュー記事をモノにしている気鋭の記者。将棋や棋士を大事にしてくれていることが伝わってきて、話を聞いているとこちらもうれしくなる。

 三次会は相崎さんとサシで。意味のあることを話した記憶はまったくない。

12月19日、木曜日。

 恵比寿に「MONO NO AWARE」のライブを見に行く。将棋だけ見ていては幅が狭くなると思い、週に1度くらいはいろいろなジャンルのクオリティの高いものに触れるようにしているのだ。

 ほぼ20代前半と思われる客層の中で、立派に平均年齢底上げ大臣を務めあげてきた。とてもすばらしいライブだった。

12月21日、土曜日。木村一基王位の祝賀会へ

 椿山荘で行われた木村一基王位の祝賀会へ。500人も集まる大盛会で、木村さんの愛し愛されぶりにあふれかえっていた。久しぶりに会う人も、まったく見たことのない人も、たくさんいた。将棋の幅は広がっているのだな。

©後藤元気

 木村さんとお話ししたい人の列が途切れず、進行が心配になる場面もあったが、それもご愛嬌。羽生さん、佐藤天彦さんなどにも行列ができていて、それぞれとても丁寧に応対していた。替わってあげたいけれど、そういうわけにもいかない。

 恒例の木村-行方尚史、目隠し将棋の余興は飛車をうまく召し取った行方さんの勝ち。5月には青森で行方さんの九段昇段祝賀会が行われるそうで、そこでもバチバチのライバル対決が実現しそうだ。

“恒例”の目隠し将棋対決。中央にいるのは、木村王位の弟子・高野智史五段 ©後藤元気

 気づけば3時間。目白の超一流ホテルにいるはずなのに、なぜか下町かどこかの宴会場にいるような、そんな気になる素敵な会だった。

 終了後、何も食べられずお腹が空いたという天彦さんを誘って、何人かで中華料理店へ。欧州サッカー、ゲーム・オブ・スローンズの話で大いに盛り上がった。