そして、「強制的に自宅で働かされる環境を作らなければならない」ことで、実は日本人は自宅で働けないほど狭い家に住み、無駄な通勤を長い時間やり、子どもや地域と関わることは乏しいことに気づく。むしろ、地方で暮らしている人たちのほうが、こういう「緊急時」の耐性は高いのかもしれないんですよ。「平常時」ですでに人間関係が息苦しいのかもしれないけど。
逆に言えば、いままでどれだけ満員電車や通勤渋滞で私たちは消耗し、不要な会議や宴会で時間を無駄に費やし、生活や幸せとは無縁な社会的関わりで苦労してきたのか、コロナウイルスによる人との接触の減少で再発見できたのです。死ぬのは嫌だけど、本当の人間の姿を見せてくれてありがとう、コロナウイルス。
少しでも変われば怪我の功名?
そして、この状況に陥ってなお、政治的にも社会的にも救ってもらえない個人事業主・フリーランスや小規模事業者は、休業補償も満足に出してもらえず、支援される内容もすべては「おカネを返さなければならない」低利子無保証の緊急融資だけで、まるでフリーランスは死ねと言わんばかりです。というか、いまの安倍政権は「フリーランスとは、どんな生態の人たちか」をまったく理解してなくない? 働き場所や仕事が突然なくなって収入が途絶えた人に、政府が緊急融資と称してカネを貸してどうするんだよ。返すカネがなくなる人たちだよ?
確かに今回の政府から出た対策案では、正規も非正規も給与補償がされることになったけれど、非正規は働きに出なければ給料がなくなってしまう仕組みであることが多いわけですから、そりゃ感染のリスクを冒してでも、這ってでも満員電車に乗って職場に向かうわけです。
それでもようやく政府がまがりなりの対策を発表したので、辛そうに満員電車に乗るサラリーマンや非正規の皆さんが解放され、朝の大混雑が緩和されました。
これを機に、日本人の働き方が大きく変わってくれれば。また、日本人が幸せな生活をどう送るのか考え直す機会になればと思ったりもするのですが、コロナウイルスのような生き物かどうかも定かではない存在の流行によって、日本人が少しでも生き方・働き方が変わったのであれば怪我の功名なのかな、と思ったりもします。
そもそも、毎年1万人単位で人が亡くなるインフルエンザが日本人の手洗い励行のついでに激減し、公衆衛生とはこれほど大事なものなのかと日本人が身をもって学ぶことができたのは、未来に向けた日本社会のちょっとした財産になってくれれば、と願います。みんな、毎年手を洗おうね。
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