官邸SNS戦略を追っていれば、当然の流れ
しかし《「星野源を政治利用するのはやめて」などの批判の声が上がっている。》(毎日新聞WEB4月12日)という点に私は注目したい。これまでの首相官邸のSNS戦略を追っていれば当然の流れであることがわかるからだ。
今回の批判は「安倍首相は貴族か!!」という見出しでもわかるように《「ステイホーム」を訴えるのが狙いとみられるが、世の中の混乱をよそに優雅にくつろぐ姿にネットは騒然。》(日刊スポーツ)という点が大きいだろう。
たとえば「自民党と若者」という論点について昨年の記事を振り返ると、
「若者狙う、首相のSNS術」(朝日新聞2019年7月3日)
《安倍晋三首相が、芸能人とSNSでの「共演」を重ねている。自身のツイッターや首相官邸のインスタグラムに記念写真を積極的にアップ。「イメージ重視」の発信で、参院選の公示を4日に控えて若年層へのアプローチを意識しているのは明らかだ。》
という記事や、
「60秒動画 若者に『刺さる』 広報戦略 主戦場はネット」(読売新聞「自民党研究」2019年12月17日)
などがある。これらを読むと官邸の好感度重視がわかる。
それはそれで結構だが、国会で「答えない」、公文書や議事録もできるだけ「残さない」が日常になり、ネットではふわっとした好感度の発信となるとどんな事態が生まれるか。
政治に対する若者の無関心が高ければ高いほど、何をやっても政権側にはお得ということになる。
菅氏は35万超の「いいね」を強調
実際に菅官房長官は13日にこう答えている。
「菅長官『若者へ有効』 首相と星野源さんの“コラボ動画”」(産経ニュース4月13日)
ここでの「有効」とはもちろん「最近、20代を中心に若者の感染者が増加しており、若者に外出を控えてもらいたい旨を訴えるのにSNS(会員制交流サイト)での発信は極めて有効だ」(13日会見)もあるだろう。しかし今までの若者向けのふわっとした好感度戦略を考えれば、この「有効」には別の意味も浮かんでこないか。
菅氏は「35万を超える『いいね!』をいただくなど大きな反響がある」と強調。批判との相殺どころかプラスだったと考えているのだろう。したたかな戦略であるが、しかし今回はあからさますぎた。先述したスポニチには「側近センスなし…首相判断力に党内から疑問も」と書かれている。