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各地でささやかれる“貯水タンクの中の死体”の都市伝説

 両事件が多くの人々の関心を集めた理由の一つに、貯水タンクでの遺体発見といった点が挙げられるだろう。「生活用水の中の死体」というイメージは、我々の神経質な恐怖を刺激する。これが飲料水であれば、カニバリズムの要素まで混じってしまう。噂は「嫌な噂」であるほど人々の口にのぼりやすい。だから「マンションやホテルの貯水タンクに死体が浮かんでいる」都市伝説は、昔から世界中でささやかれている。

 さらにこの都市伝説が厄介なのは、実際の事例もいくつか起きているところだ。ざっと新聞・雑誌を調べた限りでも、1979年に蒲田のマンションで、1991年には池袋のラブホテルにて、給水タンク内での変死体発見が報告されている。おそらく二つとも犯罪性のない事故死だが、客や住人の「水道水が臭い」とのクレームで発覚したというのが、なんとも嫌なディテールではないか。

 これが「給水塔」となると、さらに風景としてのイメージ規模が大きくなる。各建物に固有の給水タンクと違って、給水塔は団地などコミュニティ全体の「水場」である。ユニークなデザインで天高くそびえる様は、共同体のシンボルとして、都市風景の中でひときわ目立つ存在だった。

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※写真はイメージです ©iStock

事件がなくても「給水塔」が怖がられるのはなぜか

 ただし近年では水道技術の発展により、給水塔そのものが姿を消しつつある。となると必然的に、残されているのは古びた設備ばかり。廃墟のようになった給水塔は、その印象的な外観が逆に災いして、幽霊屋敷さながらの恐怖を抱かれるケースも多い。

 私にも、そうした風景の記憶がある。新宿・百人町三丁目~四丁目の都営団地に2000年代半ばまであった、古びた二つの給水塔だ。ただ私自身は、その解体直後に近隣に引っ越してきたので、近くでまじまじと観察したことはない。そこでインターネットにて当時の面影を探してみたところ、給水塔マニアの方々が撮影した写真が幾つもアップされていた。あらためて見てみると、六角形の外壁に蔦がからまる様子が、神秘的にすら思える建築物だ。読者諸氏もぜひ、ネット検索してその画像をご覧になっていただきたい。

 これらの給水塔は、近所の子どもたちにとって心霊スポットの一つにも数えられていたらしい。といっても、なにか具体的な怪談があった訳ではないようだ。昔は交通量も少なく閑散としたエリアだったので、薄暗い時間となれば、年代物の給水搭が不気味に映った……ということに過ぎない。あるいは夕日を受けてそびえたつ様子が、魔法の搭か、謎めいた秘密基地にも感じられたのだろうか(余談だが、江戸川乱歩「怪人二十面相」の隠れ家も、この付近にあるという設定だった)。

かつてここには巨大な給水塔が存在した ©吉田悠軌
都営団地、第二給水塔の跡地 ©吉田悠軌