「ここで撃たれるか、北海道で働くか」
そんな宇梶さんも年齢を重ねるにつれて、自分のルーツについて関心が強まったという。昨年、アイヌの地を舞台にした「永遠ノ矢=トワノアイ」で脚本と演出を手がけたのもその1つ。ウポポイではPRアンバサダー(宣伝大使)を務め、プロモーション映像に自前の民族衣装を着て登場している。
『熱源』と同様、明治期のアイヌが登場する漫画『ゴールデンカムイ』は、ふたりとも愛読者。その話題で盛り上がるなか、宇梶さんは「グレて」いた、若い頃の仰天エピソードも披露した。
宇梶 あの漫画を読んで思い出したことがあるんです。僕が高校時代にグレていたとき、浦川治造という母の弟に北海道へ連れて行かれました。テレビではお話しできないことですが、この叔父さんは狩猟もしていて、そのときに「アイヌは人に迷惑をかけない。ここで撃たれるか、北海道で働くか、選ばせてやる」と言われたんです。その言い方が『ゴールデンカムイ』のアイヌの少女とそっくりだなと思ってね。昔の西部劇でよく見た「インディアン、嘘つかない」も一緒だなと。
宇梶さんを叱りつけた叔父の浦川氏は東京アイヌ協会名誉会長を務め、アイヌの長老として知られる著名な存在だ。
◆
それぞれの立場でアイヌ文化の魅力を語り合った宇梶さんと川越さん。その対談「知れば知るほどアイヌは凄い」は、「文藝春秋」6月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載されている。演劇と小説の違いはあっても、アイヌ文化を伝えていくには、人々をよろこばせる「楽しさ、面白さ」が大切という思いは共通していた。
※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。
知れば知るほどアイヌは凄い
【文藝春秋 目次】<総力特集202頁>緊急事態を超えて ウイルスVS.日本人 山中伸弥 橋下 徹/磯田道史「続・感染症の日本史」/WHOはなぜ中国の味方か
2020年6月号
2020年5月9日 発売
定価960円(税込)