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最悪拷問の恐怖…産経新聞記者によって中国“タブーメディア”に名前をさらされた話

2020/07/07
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「今回の件に衝撃をうけています。日本国内からの取材依頼について同様のリスクがあり、再発防止策も取られないとすれば、科学系の記者を含めてメディアとの接触を一切断つしかない。中国メディアよりも日本のメディアに対しておびえるのは理不尽な話ですが、身の安全の確保と、研究・教育環境の維持を考えればやむを得ません」

 上海市内の大学に籍を置く別の日本人研究者はこう話す。

在中国の日本人を「後ろから刺す」行為

「佐々木氏の手でH氏の名前が『大紀元』に掲載されたのは、H氏が中国におけるラボ開設事情を学会誌に寄稿するなど、研究者内部で積極的に情報を出すタイプの人だったことで、日本のメディアの目に止まったことが一因。今後、日本語ではできるだけ情報を発信しない、自分の名前が日本語で報じられるイベントに出ないなど、自衛をはかるよりほかはありません」(同)

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テープの音楽と指示に合わせ集団でトレーニングする法輪功のメンバー(2000年撮影) ©共同通信社

 そもそも、中国にいる日本人研究者はたとえ中国側のプロジェクトに応じて渡中していたとしても、帰国後は日本の教育や学術研究にも貢献する人材となる。また、中国での研究成果を発表した日本人研究者の論文は、国境をこえて人類全体で共有されていく。当然、中国で学んだり働いたり研究活動をおこなっていることと、中国共産党体制を積極的に擁護することがイコールになるわけでもない。

 本来、研究者としての社会的責務には、メディアの取材に積極的に応じて、最先端の知を一般社会に対して伝えていくことも含まれている。しかし、日本の大手メディアの記者と「接触」するだけで法輪功系メディアに名前が出るリスクがあるとすれば、容易にそれもできない。海外にいる日本人研究者を後ろから刺すようなメディア関係者の行動は、日本の国益を毀損するものだと言うしかないだろう。

 なお、文春オンライン編集部は佐々木類氏の著書の出版元であるハート出版に、今回の事態について説明を求めるメールを送り同氏宛てで文面を転送してもらったが、期日までに回答を得られなかった。そこで佐々木氏の勤務先である産経新聞社にも同様の書面を送り、7月6日までに本人に質問内容が伝わったことを確認したが、やはり佐々木氏からの反応はなかった。

 著書のプロフィールでは「徹底した現場主義を貫く」「産経新聞屈指の論客」とされる敏腕ジャーナリスト・佐々木類氏。だが、どうやら文春オンライン編集部と「接触する」ことはお好みではないようである。

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※なお渦中のH氏については、編集部が連絡をとった結果、今回の事件について事情を公開しているツイッターアカウントが本人のものであることを確認。ならびに、ツイッター上で公開された画像の使用許可を得た。

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