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山道を進んだ先に見えてくる異世界トンネル

 崎山地区に存在する“異世界トンネル”は鉄砲ぐりだけではない。

 熊出没注意の看板が立つ山道を進んだ先に突如現れる“此ノ木隧道”がもう一つのそれだ。公道から外れた場所に位置しているため、長く地元に住む人にもほとんど存在を知られていない。秘境中の秘境スポットといえるだろう。当然、Googleストリートビューにも登録されていないエリアだ。

右手にトンネルの入り口が見える ©文藝春秋
時の流れを感じさせる車高制限の標識 ©文藝春秋

 晴れていても木々が日光を遮り、道は常に薄暗い。地面はぬかるみ、方々にシダ植物が繁茂している。

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 ジメっとした空気感が肌にまとわり、まるで異世界に迷い込んだような気分にさせられる。

トンネル内に灯りはない ©文藝春秋

 トンネルを抜けると左右二手に道が分かれているものの、どちらに進んでも山道が続いていて、簡単に立ち入れないエリアにぶち当たる。住居らしき建物も確認できず、現在進行形で活用されているような土地も見えてこない。果たして、このトンネルは誰が何の目的で建てたものなのだろうか?

正面から見たトンネル ©文藝春秋
反対側からの光景 ©文藝春秋

そう遠くない時期に整備が行われたことがわかる痕跡

 また、細かな箇所を観察してみると、誰かの手で整備が続けられていることがわかる。

 例えば、木々を留めるボルトには新しく打ち付けられたものが確認できるし、天井部にあたる木材は所々できれいなものに入れ替わっている。かつてそこにあったであろう支柱跡のような窪みだってある。

 トンネルの用途こそ不明ではあるものの、現在に至るまで定期的に整備が行われているのだ。

木々を留めるボルトは新しく、天井部の木は所々で入れ替わっていて交換の痕跡がある ©文藝春秋

 謎は深まるばかり。

 なぜこんな山奥にトンネルがつくられたのか。また、なぜこのトンネルがいまだに整備され続けているのか…。

 少しでも真相に迫ろうと聞き込みをしていると、石川県で長らく森林開発に携わられてきた経歴を持つ、現・大田町会長に話を伺う機会を得られた。