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男は弱い生き物なのだ

 強くなんて生きていられないよ。独りでいることを楽しむなんてとてもできない。

「死んで見守る」よりも、ただ生きていてくれた方がいい

 旦那に先立たれた女房は生き生きとしているけれど、奥さんを亡くした夫は弱っていく。

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 世間一般で言われていることだが、これはつくづくその通りだと思う。現実的に、平均寿命も女性の方が長い。どうして男は弱ってしまうのか?

 それは、生活能力があるか、ないかとかいう次元の話ではない。男は弱い生き物なのだ。神様がそういう風に創ったのだと私は思う。

©文藝春秋

 何度も繰り返すけど、奥さんに先に逝かれるってのはみじめだよ。

 もし、私が先に亡くなっていたら、沙知代はピンピンしていただろう。新たな夫をつかまえることはさすがに無理だっただろうけれど、元気に楽しく暮らしていたはずだ。

 旦那が先に亡くなるのが普通だよな。私のお袋だってそうだった。

 やっぱり、男の独り暮らしと女の独り暮らしを同列には語れない。

 一般的に、妻に先立たれた男は再婚するケースが多い。もちろん例外はあるけれど、夫に先立たれた女性はあまり再婚しない印象がある。

 あれはどうしてなのだろう? ようやく夫から解放されて、「自由になりたい」と考える人が多いからなのだろうか?

沙知代の姿を思い出す

 先立たれて、独り残された男は残りの人生をどうやって生きればいいのか?

 お独りさま3年目を迎えてもなお、いまだにその答えはわからない。

「死んだ妻や夫が見守ってくれるから、強く生きなさい」とアドバイスをくれる人がいる。その理屈もわからないでもない。

 私だって、いつもサッチーがそこにいるような気がするよ。

 こういう「死んだ人がそこにいるかもしれない」という感覚は、誰にだってあるものだと思う。亡くなったからといって、そう簡単に忘れられるようなものではないのだから。

 夕飯を食べる度に、いつものお決まりの文句、「今日は何食べる?」と聞いてくる沙知代の姿を思い出す。これがもう毎日だよ。

 でも、「だから強く生きよう」とはならないものだ。なぜなら、あくまでも「そこにいる気がする」だけで、実際は「そこにはいない」のだから。

 死んで見守ってくれるよりも、生きて見守ってくれている方がずっといい。