約25年前、セガが販売を開始したプリントシール機「プリント倶楽部(※1)」。当時は、撮った写真がその場でシールになって出てくるという画期的なアイディアがウケて、女子高生を中心に爆発的な人気を博した。
2020年10月には「プリクラ」を世に出した後沈黙していたセガが、再びプリントシール市場に乗り出して話題になった。発売以来、四半世紀が経った今も、プリントシール(以下、プリ)は女子高生の必須アイテムだ。
※1…プリント倶楽部、プリクラは株式会社セガホールディングス、またはその関連会社の登録商標、または商標。
そんなプリが長年支持を集めている理由のひとつが、撮るだけで目の大きさや輪郭、肌や髪のツヤを加工して写真写りをよくしてくれる、いわゆる“盛り機能”だ。しかし、カメラ付き携帯電話が普及した頃に女子高生だった筆者は、ある疑問を抱いた。
「プリとスマホの加工アプリは、ユーザーの奪い合いになるのでは……?」
カメラ付き携帯の写真は加工できなかったが、スマホアプリなら撮る段階である程度盛られているし、自分で加工もできる。そうなると、プリを撮りに行く人も減ってしまうかもしれない。私たちアラサーの思い出がまたひとつ消えてしまうかもしれない。
そんな不安を胸に、プリントシール市場トップシェアを誇るフリュー株式会社を訪ねた。(取材・文=真島加代/清談社)(全2回の1回目/#2を読む)
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プリとアプリ、“両方使う人”が圧倒的に多い
「じつはプリかアプリ、どちらかにニーズが偏るというよりは“両方使っている人”のほうが、圧倒的に多いんです。実際に、プリを撮る回数が多い人は、加工アプリの利用頻度も高い、というデータも出ていますね」
そう話すのは、フリュー広報部の門脇彩さん。ゲームセンターでは、プリ撮影を並んで待つあいだに、女の子たちがスマホで自撮りをしている光景が見られるという。
「プリには誕生したときから、そのときどきの“ライバル”がいます。90年代は『写ルンです』などのインスタントカメラ、その数年後にはカメラ付き携帯電話、現代はスマホの加工アプリ、と時代とともに変化しています。ただ、結果的には共存関係になるケースのほうが多いんです」
たとえば、2000年代のライバル、カメラ付き携帯電話では、プリの画像データが取得できるようになった。また「プリと加工アプリは似て非なるもの」と、門脇さんは語る。