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「おかあさんやすめ」というフレーズをご存じだろうか。これは軟らかい食べ物の頭文字を並べたもの。

・オムライス
・カレーライス
・アイスクリーム
・サンドイッチ
・やきそば
・スパゲティ
・目玉焼き

 これとは別に「ははきとく」というのもあるらしい。

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・ハンバーグ
・ハムエッグ
・ぎょうざ
・トースト
・クリームシチュー

「き」を「ぎょうざ」で処理しているあたりに作者の苦労がしのばれるが、「軟らかい食べ物」であることを訴えんとする熱い思いは伝わってくる。

©iStock.com

「休め」と言われたり「危篤」にされたり、おかあさんも大変だが、こうした軟らかいものばかりを子どもに与えることが、“ぽかん口”のベースにある、と小山氏は指摘する。

「小さな子どもに、良かれと思って軟らかいものばかりを食べさせていると、口の周囲の筋肉の発達が遅れて“ぽかん口”になりやすいのです。平常時なら『口を閉じなさい』と注意もできるけれど、マスクをしていると見えないのでそれもできない。つまり、“おかあさんやすめ”と“コロナ禍”の相乗作用で、“ぽかん口”のリスクが大きく上昇しているのです」

 それなら、乳歯から永久歯に生え変わる段階で硬い食べ物に移行すればいいじゃないか、と考えるかもしれないが、対策は早い方がいい。

「乳歯のうちに『前歯で切断し、奥歯ですり潰す』という本来の咀嚼を覚えないと、嚙み切る能力が育たないばかりか、使わない機能は退化していく。乳歯のうちに咀嚼機能を身に付けられるか否かは、その後の成長に大きな影響を及ぼすことになるのです」

 人間の子どもと動物を並べて語ると叱られそうだが、わかりやすいたとえなので許してほしい。

「野生のサルと動物園のサルの歯を比較すると、野生のサルのほうが圧倒的に歯周病は少ない。飼育されたサルは何らかの“調理”をしたエサが与えられるのに対して、野生のサルは何の処理もされていないものを食べている。つまり“硬いもの”ばかりを食べているのです。硬いものを食べればそれだけでも歯の汚れが落ちるし、顎の力が強くなるのでさらに硬いものも嚙み砕けるようになるのです」