スティーブ・ジョブズ親子の授業を担当し、自身の長女はYouTube CEOに就任。教師として、そして母として、数多くの著名人を育てたことから、シリコンバレーのゴッドマザーと呼ばれる女性がいる。その女性の名はエスター・ウォジスキー。

 彼女の型破りでユニークな教育方法を紹介した書籍『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTube CEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』』(文藝春秋)が話題を呼んでいる。ここでは同書より、翻訳を担当した関美和氏によるあとがきを引用。自身も2人の子どもを育てた経験を持つ翻訳者は、アメリカ教育界のスーパースターが記した教育方法をどのように受け止めたのだろうか。(全2回の2回目/前編を読む)

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反省と後悔と、前向きな気持ち

 50代も半ばを超え、2人の子供も成人し、「あの時はこうすればよかった」「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」と思い返すことが多くなった。未熟な自分を振り返り、誰かを傷つけてしまったことを悔やみ、今ならもっと上手に問題に向き合えたのにと思ってしまう。

 本書を読んでまず感じたのは、「タイムマシンに乗って過去に戻れたら、この本の教えを使ってもう一度やり直したい」という、反省と後悔の入り混じった気持ちだった。だが一方で、「これからでも間に合うかもしれない」と前向きにもなれた。この本にも書いてあるとおり、完璧な親などいないし、誰もが失敗するし、そんな自分を許すことが周囲とのより良い人間関係を作っていく第一歩になる気がしたのだ。

アメリカ教育界のスーパースターとして知られるエスター・ウォジスキー氏 © Jo Sittenfeld

 著者のエスター・ウォジスキーは、シリコンバレーでは知らない人のいない教師でありスーパーマザーである。その理由は、彼女が育てた3人の娘たちにある。長女のスーザンはグーグルの16番目の社員としてグーグルの急成長を支え、その後動画配信サービスのユーチューブを率いる素晴らしいリーダーとなった。次女のジャネットは医師となり、貧困層やマイノリティにおける肥満の問題に取り組んでいる。三女のアンは、消費者向けの遺伝子検査を手がける草分け的企業の23アンドミーを設立した。23アンドミーは2021年にも上場が予定され、その時価総額は日本円で3000億円を超えると言われている。