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同時に、どの作品画面も底抜けに明るく感じられる。
実物を目の前にするとよく分かるけれど、近藤亜樹の絵画はかなりの「厚塗り」だ。すこし角度をつけて眺めると、絵具の極度の盛り上がりがすぐ目に飛び込んでくる。
ふつうなら色というのは、厚く重ねれば重ねるほど濁ったり暗くなっていくもの。近藤の場合だけは、筆を振るうほどに表面の曇りが拭い去られていくかのよう。なぜそんなことが起こる?
色が濁る暇なんてない
おそらく近藤の目には、はっきりと映っているのだ。自分の描こうとしているものや、描くことで目指す境地のようなものが。
彼女が描こうとしているものとはきっと「生命の根源」であり、描くことで目指しているのは「生の震え」や「生の歓び」をじかに感じたり伝えたりすること。
目的地は明快である。近藤の筆は潔く迷いなく、つねに画面の上を疾走する。色が濁る暇なんてない。要らないもの一切の混ざる余地もない。それで塗れば塗るほど、画面は明るさを増していくのだ。