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ホモ・サピエンスの移動力の高さ

 ホモ・サピエンスが人類唯一の生き残りとなった理由の一つに、その移動力の高さが挙げられる。ホモ・サピエンスは、地上を移動するのはもちろんのこと、海を越える知恵まで持ったことで世界中に広まり、他の種と混ざり合い、病原菌やウイルスをまき散らし、時には競争に勝ち、人類で唯一の生き残りとなったと考えられるのだ。

 ホモ・サピエンス同士でも、他の人種と接触することによる事件は、歴史上、何度も起きている。有名なのは、コロンブスの新大陸「発見」とスペインによる征服の過程で、ヨーロッパから病原菌が持ち込まれたことによって、南北アメリカ大陸の先住民が壊滅的な打撃を受けたことだろう。

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 15世紀末に新大陸にはなかったインフルエンザや天然痘、梅毒などの病気が持ち込まれたために、耐性のなかった先住民族は次々と死に、マヤ、インカ、アステカなどの文明は滅亡した。

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ホモ・サピエンスが生き残ったワケ

 現代の世界でも、アマゾンなどに住む、文明社会と接触したことのない非接触民族「イゾラド」は、一般的な病気に耐性がないため、風邪ウイルスでも死んでしまう可能性がある。もし、イゾラドの棲む地域に今回の新型コロナウイルスが入り込めば、多くの人が亡くなってしまうだろう。

 絶滅の形は多種多様だが、意図せずにホモ・サピエンスが持ち込んだ病気によって、ほかの人類が絶滅してしまった可能性は大いにありうることだ。そして、その逆もあり得た。つまり、ホモ・サピエンスが、耐性を持たない病原菌を他の人類によって伝染され、絶滅していた可能性もあるのだ。

 なぜ僕たちだけが生き残ったのか。それは能力が高かったからではなく、ただ単に、運が良かっただけなのかもしれないのだ。

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