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周囲の舌打ち、改札から乗車まで20分…健常者が知らない“車椅子移動のリアル”

2021/04/22
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無人駅では、数日前から時間を決め打ちして…

 伊是名氏の騒動はEVがない無人駅で起きたが、有人駅でもEVが無いと難儀だ。運良く階段昇降機があっても手配や起動等で往復各10分程度はプラスされると見なければならない。エスカレーターを利用することもあるが、車椅子用の機構を備えてないものも多く、その場合は車椅子ごと後ろにのけぞり3~4人で押さえてもらう乗り方になる。この恐怖感は凄まじい。

 これらが全て無いとどうなるか。特に無人駅や一人駅の場合、事前連絡無しで利用するのは事実上不可能だろう。少なくとも私はできた記憶が無い。必然的に数日前から時間を一点に決め打ちした上で近隣駅からの応援を依頼しておくという大がかりな話になる。

 昔アクシデントで10分ほど遅れた際、自己責任ということで全ての対応が白紙となり途方に暮れた経験がある。従って、たとえ当日の予定が押そうが何しようが絶対守らねばならない。呪縛のようで前日から重圧を感じる。

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 もっとも1か月前に伝えても「介助者同伴でないと無理」と断られた経験もあるので、利用できるだけありがたいと思うしかない。

タメ口や幼児語、本人無視の会話

 無論、駅員さんには大変感謝しており、必ずお礼も言うし丁寧語で話す。だが解せないのは、他の乗客には敬語を、私にはタメ口を使う駅員が多いことだ。知的障害の有無などに関わらず一成人なのだから対等な人間として接してほしい。少なくとも幼児言葉を使ったり、本人を無視しヘルパーにばかり話すのは良くない。

 付け加えると、福祉の支給量や規則の関係もあるため、障害者が常にヘルパーと一緒にいる訳ではない。私のように一人での移動が圧倒的に多い人も大勢いるので、介助者は基本的に居ないのを前提として物事が考えられていく事を願う。

 ところで大半の土地は電車が無い。当然普通のタクシーには乗れない。仮に福祉タクシーがあっても大抵1ヶ月ほど前に予約する必要がある。

 よって必然的にバスに乗ることになるが、ノンステップはまだまだ少なく、急勾配だったり「介助者がいないと乗れない」と言われたりする。舌打ちしたり、危険なスロープの出し方をする運転手も多いがとても文句は言えない。元々優先席にいた高齢者に移動してもらったり、車椅子の固定で更に時間を要したり、「車椅子の方のご案内に伴いお待たせしております」といった放送が流れたりするのも心苦しい。