――今、大内さんは何人くらい労働者を派遣していますか?
「10人以上やろ、その中には泊りで現場作業しとる人間もおるし。常時10人は使っとるのと違うかな、ワシは長年この仕事やっとるから、コロナが流行ろうと、不景気になろうと仕事がまったく減らへんしな」
先ほど取材した上村さんはコロナで仕事が減ったと語った。
しかし、一方の大内さんは仕事は減ってないと豪語した。
果たしてその言葉のどちらが真実なのであろうか。現場に行ったことのない筆者には分からないが、新型コロナウイルスの流行で現場がフルに稼働しているとは到底思えないのが正直な感想だ。
――大内さんは車に貼り紙をして募集しているんですか?
「ワシは車ではやっとらんよ。センターに仕事を探しに来る奴おるやろ。まだ何も道具も持っていない人間や仕事にあぶれた人間。そんなのに声を掛けて募集しとる車に乗せるんや」
この場所に来たことがある人間であれば、手配師がいる朝方に来ると車に貼り紙が貼ってあるのを見た記憶があるのではないだろうか。
例えば「土工1万円・寮3000円」とかの大まかな説明文だ。
この土工というのは、工事の中でも一番下っ端の何でもやらされる仕事だ。
寮は1泊3000円という意味で、これは仕事がなくても引かれる地味に懐に響く金額である。
今回のような新型コロナウイルスや長雨が続いたときにはかなりのダメージを喰らうのだ。
手数料は1日「ひとり2、3000円」
――大内さんはひとりいくらくらい抜いているのですか?
「ワシはそうやな、派遣した現場にもよるけど、ひとり2、3000円やろ。それは本人の日当に関係なくな、そいつらの日当には直接響くことはあらへん。簡単にいえば手数料、斡旋料やな」
――毎日そのくらいの額がひとり頭入ってくるんですか?
「だから派遣した現場による言うてるやろ」
派遣した現場による、と大内さんは話す。
また、それは派遣された労働者の日当に響かないとも言っている。
会社から派遣されていなく、フリーで手配師をしている大内さんの稼ぎは、言い換えれば借金漬けにされて売られている人が商品だということになる。大内さんに派遣された労働者は、初めから借金を背負って働かされているのであろう。
それが事実なら人身売買と同じであり、明らかに法に違反していることに間違いはない。
そこを大内さんに確かめた。
――大内さんは労働者を売っているという解釈でいいのですか?
「売っているという言い方はおかしいやないけ。例えば現場の道具を持ってない人間おるやろ。西成に初めて仕事を探しに来たような人間はみんなそうや。それを店で作業着やらいろいろ揃えなきゃあかん。現場でも買うこと出来るけど、それはホンマに高いんや。それをワシが善意で買ってやっとる。それは借金や。当たり前やろ」
――いや、それは仕事で使う道具のことで、私が聞いたのは労働者を売っているのではないかということです。
「それは売ってない、そんなの人身売買やんけ」