「革命」と「天皇制」
しかし、「革命」が成功しなかったのはそれだけとは思えない。当時、さまざまな世論調査が行われたが、例えば1946年2月4日付毎日に掲載された「世論調査研究所」1945年12月の2400人に対する「憲法改正問題」での「天皇制の是非」の調査結果。
1.天皇制支持 賛成2181人(91.0%)
イ.現状のまま支持 381人(総数の約15.9%)
ロ.政治の圏外に去り、民族の総家長、道義的中心として支持 1084人(同45.2%)
ハ.君臣一体の見地より、政権を議会とともに有する体制において支持 680人(同28.3%)
ニ.その他 36人(同1.5%)
2.天皇制反対 賛成205人(約8.5%)
イ.共和制支持。すなわちアメリカのごとく選挙による大統領制を支持 137人(総数の約5.7%)
ロ.ソビエト制支持。すなわちソ連のごとく、公選せられた委員会において元首を選挙する体制支持 64人(同2.7%)
ハ.その他 4人(同0.2%)
「天皇制の問題については、急進的な民間改正案、保守的な政府案のいずれにも左袒(対立する勢力のどちらにつくかを表明する)せず、輿(よ)論は天皇を政治の圏外に置いて民族の総家長、道義の中心者として支持する意見が多く、天皇制の否定は総数のわずか9%を占めるにすぎず、反対者のうち共産主義賛成者の数が特に少ないのが目立ち、その理論的基礎はそれぞれ異なるにしても、天皇制に対する輿論的の支持は圧倒的である」と記事は述べている。
マッカーサー元帥らが統治上必要としたのも同じ理由からだったが、天皇制への国民の広範な支持が「革命」を実現させなかった大きな原因だったといえるのだろう。さて、現在はどうだろうか?
【参考文献】
▽マーク・ゲイン「ニッポン日記」 筑摩書房 1951年
▽入江相政「入江相政日記 第2巻」 朝日新聞社 1990年
▽「労働年鑑昭和22年版」 中央労働学園 1947年
▽福永文夫「日本占領史 1945~1952」 中公新書 2014年
◆◆◆
生々しいほどの強烈な事件、それを競い合って報道する新聞・雑誌、狂乱していく社会……。大正から昭和に入るころ、犯罪は現代と比べてひとつひとつが強烈な存在感を放っていました。
ジャーナリスト・小池新による文春オンラインの人気連載がついに新書に。大幅な加筆で、大事件の数々がさらにあざやかに蘇ります。『戦前昭和の猟奇事件』(文春新書)は2021年6月18日発売。